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「みどりの日の約束」

東京の街は、まるでジオラマのように緑とコンクリートが交差していた。今日、5月4日はみどりの日。休日であるこの日、まるで自然が街を取り戻すかのように、都市の中で様々なイベントが開かれていた。

玲奈は、長い間会っていなかった幼馴染の健太とこの日に会う約束をしていた。二人は、子供の頃よく行った公園で待ち合わせをすることにした。この公園は、街の中心部にありながら、まるで森林の中にいるような雰囲気が漂っていた。

健太と最後に会ったのは、中学生の時だった。その後、玲奈は東京で高校に進学し、健太は田舎の実家を継ぐために戻ってしまった。毎年年賀状は交換していたが、直接会うことはなかった。

公園に着くと、緑の中を歩く親子連れや、ランニングをする人々の姿が目に入った。玲奈は、懐かしい思い出が次々と浮かび、少しだけ胸が高鳴った。

「久しぶりだな、玲奈」と、背後から聞き覚えのある声がした。振り返ると、健太が笑顔で立っていた。彼は背が高くなり、顔つきも大人っぽくなっていたが、その目の優しさは変わっていなかった。

「ほんと、久しぶりだね、健太。なんだか変な感じ」と、玲奈は照れくさそうに微笑んだ。

二人は、子供の頃によく遊んだ池の周りを歩きながら、過去の思い出や近況について話した。健太は、家族の農場での仕事が大変だが充実していること、玲奈は、大学での勉強やアルバイトの話をした。

やがて、二人は公園のベンチに座り、沈みゆく夕日を眺めた。自然の美しさに囲まれて、言葉はなくても心は通じ合っているように感じた。

「玲奈、また来年のみどりの日に、ここで会おうか?」と、健太が提案した。

玲奈は微笑みながらうなずいた。「うん、約束だね」と答えた。

その日から、二人は毎年みどりの日に公園で再会することを約束した。それは、都会の喧騒と自然の調和の中で、二人がいつまでも友情を大切にし続けるための、大切な約束だった。