何度も名前だけ登場していた税金ストラドル(跨ぎ)ルールですが、本文一言目が『極めて複雑である』で始まっています。
多分ほとんどイミフで終わる気がしますが、特にオプション取引をする立場としては重要そうなので、目を通しておこうと思います。


(その7:個別株オプション単純所持 / その9:適格カバードコール


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税と投資~個人投資家へのガイド~
(http://www.optionseducation.org/content/dam/oic/documents/literature/files/taxes-and-investing.pdf)


p. 17 相殺ポジション: 税金ストラドルルール


税金ストラドルルールは極めて複雑である。これは、納税者が、相殺利益が計上される前に損失分を控除するという行為を防ぐことを意図しているが、そのルールは非常に機械的であり、損失控除を禁止する、またその他の不都合な税効果を引き起こすために、予期せぬ状況に適用され得る。
一般的に、連邦所得税におけるストラドル(跨ぎ)とは、活発に取引きされる個人資産(株式、債券、商品および通貨など)に関する『相殺ポジション』の保持を指して言う。いかなる保有ポジションであれ、1つ以上の他のポジションの保持に対する損失リスクを実質的に減少させる場合、ポジションが相殺されているとみなされる。あるポジションが別のポジションでの損失リスクを実質的に減少させる場合、たとえ第2ポジションが第1ポジションに関連する損失リスクを減少させない場合でも、税金ストラドルルールが適用されると思われる。言い換えれば、リスクの減少は相互性を必要とはしないようである、ということだ。
投資家が『損失リスクの実質的減少』テストに合致してしまう2つのポジションを保有した場合、結果は以下のようになる:


1. 課税年度の終了時の含み益(もし存在するなら)の範囲内で、損失額を相殺していたポジションに対し、当該年度の損失控除は認められない。その年度の終了時に、含み益を相殺する範囲内で再度繰り延べの対象となるような場合、繰延損失は、次の課税年度においても継続して処理される。ただし、25ページの『指定されたストラドル』の議論を参照すること。


損失の繰り延べは、相殺ポジションにおける含み益の範囲にのみ適用される。当該損失が年末時の含み益を上回る場合、超過分の損失は繰り延べられない。


損失繰延はまた、『引継ぎポジション』または『引継ぎポジションを相殺するポジション』において、年度末に含み益の範囲内であることが必要とされる。一般に『引継ぎポジション』とは、元々の損失ポジションと同じサイドの市場取引(買いポジションまたは売りポジション)を指す。これは、損失ポジションを置き換えるものであり、損失ポジションの処分から30日前から始まり30日後より前までの期間中にエントリーされるものである。しかし、ストラドルの全てのポジションが処分された後にエントリーしたポジションは、引継ぎポジションとはみなされない。


2. 1年以内の保有期間であるポジションがストラドルの一部となった場合、そのポジションの保有期間は失われる(付録II参照)。そのようなポジションの保有期間は、そのポジションがストラドルの一部ではなくなった時に、再び(ゼロから)始まる。


3. 長期キャピタルゲインやロスを生じるポジションを保有し、かつ相殺ポジションにエントリーした場合で、売却を行った場合、その相殺ポジションの処分による損失は、短期ではなく長期として扱われる。


4. 相殺期間中に発生した全ての持ち越し費用および利息費用(信用取引分を含む)は、資産計上される、かつ配分可能なポジションの取得ベースに加算される必要がある。しかし、そのように資産計上された費用は、ストラドルに含まれる株式から受け取った配当金のような、ストラドルポジションによって生じる収入によって減少される。ストラドルにおけるそのポジションをもたらした(純)コストは取得ベースに資産計上されるため、処分時に、潜在的キャピタルゲインを減少させるか、または潜在的なキャピタルロスを増加させることになる。


2004年の法律制定の結果、株式の買いポジションを保有してその株式の空売りをすること(『売りつなぎ』)は、現在、税金ストラドルルールにおける、ポジションを相殺するものとして扱われている。以前は、株式を保有してその株式の空売りにエントリーした納税者は、ショート・セール・ルール(10ページに記載)の対象となっていたが、税金ストラドルルールの対象ではなかった。現在は、ショート・セール・ルールと税金ストラドルルールの両方が適用され得る。
損失リスクの実質的な減少を決める上では、相殺ポジションが同じ発行体からのものである必要はない。株式の場合、相殺ポジション(プットオプションなど)は、『実質的に類似または関連する資産』に関連していなければならない。その結果、状況によっては、ある発行者からの株式および他の発行者からのポジションが、相殺ポジションとみなされ得ることもあり得る。対照的に、上で説明したように、ウォッシュ・セールおよびショート・セール・ルールにおける『実質的に同一の』株式という概念は、一般的に、対象の株が同じ発行者のものであることを必要とする。


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…えぇ~っ、複雑すぎぃ!税金を一般市民から掠め取るためにわざとやってるだろチクショーめぇ!…としか思えない鬼畜難易度です。
しかし、やや言い訳というか無責任な感じですが、やはり自分にはさほど関係無いからどうでもいいかな、というのが正直な所でもあります。
もちろんコールとプットの同数買い=ロングストラドル取引を最近やっており、その名の通りストラドルルールには確実に引っかかるんですが、これは別に節税のためにやってるんじゃなくてリスクヘッジのためにやってるだけだから、『ストラドル取引は税制上不利になりますよ』と言われても「あっ、そっすか」としか言えないという感じです。
目的は別の所にあるから税金が多くかかってもどうでもいいというか仕方ないし、同じく税金のためにやってることじゃないからその不利なルールを回避するためにあえて取引の形態を変えるなんてことも本末転倒なんで、決してそうはしないだろうから詳細は気にしない、というのが個人的な感触です。


一応、軽く調べてみたら、我らが親方日の丸・金融庁の調査書に、関連する話が結構細かく解説されていました。


金融取引に係る 租税回避への防止策に関する調査
(http://www.fsa.go.jp/common/about/research/20140507/01.pdf)
※ストラドル・ルールに関しては10ページから


各ルールの背景知識から丁寧に述べられているので、興味がある方はこちらを参考にされるとより理解が深まるかもしれません。
…まぁ、多分『興味がある方』なんていないでしょうが…。何せ、かく言う自分自身全く興味がないので、多分そんな熱心に読みませんしね。


ただ、オプション取引(カバードコール売り)が現物株の保有期間にどう影響を与えるのかは、最近大量にカバードコール売りを行った立場としては結構気になる点です。次回はそのカバードコールについての話なので、どんなシステムになっているのか、非常に楽しみです。