(前回のあらすじ)
オプション取引の達人と噂される人物に会って話を聞くために、ワゴンランドなる島へと赴いたスライム。

 

しかし、どうやら偽者の権利書を掴まされてしまったのか、せっかくオプーナ邸へと赴いたのにあえなく門前払い。怒りのスライム、さぁどんな行動に出る!?

 


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何としてももう一度あの人に会いたい…あの甘いボイスを聞いて、甘いマスクを見れば…そうすれば……この偽の権利書を叩き付けて文句を直接言えるんだぁーっ、と気合満々のスライム、早速件の男を見つけたぞ!

 

 

ス「やいショーンE…いやカワシモ!偽の権利書を売りつけやがったな!今日という今日はもう許さないぞ!!」


シ「おっとスライム様、どうかお気をお静めいただきたい。まさかこの私が偽物を売るわけがございますまい。

   あれは『私に会う権利』をまずお売りしたまで。こう見えて私も忙しい身なもので、なかなかどうして、権利を持たない方とお会いしている時間はないものですから…。

   お渡ししたとたんスライム様は駆け出していってしまわれたため、『オプーナに会う権利』は渡しそびれてしまいました。呼び止められれば良かったのですが…」


ス「あ、そうでしたか、これは失礼しましたショーンさん。確かによく確認しなかったこっちのミスかもしれませんね、あいすいません。

…いやぁ~、わたしゃ初めからショーンさんは信頼できる方だと思ってましたよハハハ」


シ「滅相もございません。さてご入用なのは『オプーナに会う権利』ですね。彼はとても忙しいので、権利のセット販売はしておりません。お1人様1枚限定でご購入いただけます。

   価格は相応のものになりますが、彼からお受け取りいただける情報を考えたら非常にリーズナブル、良心的価格と申し上げても差し支えないかと思っております。お値段は、ゴニョゴニョ…」

 

ス「えぇぇーっ!そりゃ何ぼなんでも高すぎませんかっ?!」

 

シ「そうは申されましても、皆さまこのお値段には納得いただいておりますよ。1年に1度だけ、彼の誕生日に特別ディスカウントを実施してはいるのですが…

…あっ!なんと今日がその日ではありませんか!いやぁ~、スライム様はなんと強運の持ち主だ、まるで神に祝福されているかのようでございますね!」


ス「あっ、やっぱりそう思われます?で、おいくらで?…えっ!まさかの99%オフ?それはお得すぎる!早速買わせていただきます!!」

 

シ「どうもありがとうございます。こちらがその権利でございます」

 

 

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早速オプーナ邸へと駆け戻ったスライム、目的の男はきっともう目の前だ!


ス「ほらっ!オプーナに会う権利持ってきたよ!」

 

スタッフ「ではどうぞ。オプーナ先生はすぐそこの和室、和厳の間においでです」

 

ス「ありがとう!さて、ワゴンの間…あ、本当にすぐだな。まるで野比家の居間みたいだ。…オプーナさーん、入りますよーっと。…あぁーっっ!!」

 

オ「おやおやどうされましたかナ?」

 

ス「この頭のボンボンは忘れもしない、島に入ってすぐに話しかけた人じゃないですかぁー!あまりにもベタすぎる伏線に、気付かなかった自分にショックですよもぉー!」

 

オ「ホッホッ。大切なことは、いつだって後から気付くものですよ。…して、何用ですナ?」

 

ス「いや、さっき会った時言いましたよね?…まぁいいや、オプション取引の極意をお聞かせいただければと。株を始めてからこっち、もうずっと損するばかりで、ワラにもすがる思いで…」

 

オ「ホッホッ、ワラとは酷いですナ。しかしスライムさんナ、そらいけませんよ、通りません」

 

ス「な…なぜ!?」

 

オ「スライムさんは私に会う権利しか持っておりませんからナ。アドバイスを聞きたければ『アドバイスを聞く権利』が必要ですわナ」

 

ス「…な…なんだとーー!…しかし、地味に一理あるから反論が出来ないっ!」

 

オ「出直してくださいナ」

 

 

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ス「ショーンさん、『オプーナからアドバイスを聞く権利』を売って下さい!ここまできたらもう引き下がれない!」


シ「もちろん構いませんよスライム様、大歓迎でございます」

 

ス「しかし初めから売ってくれればいいのに、ショーンさんも顔に似合わず意外と意地悪ですね」


シ「スライム様は『私からアドバイスを聞く権利』を購入なさっておりませんので、そこはご容赦いただきたい。では、まず再度『私に会う権利』からのご購入でございますね…」


ス「…えっ!?ちょっと待ったー!たしかその権利、『2枚の価格で3枚セット』を買ったと思うんですけれども」


シ「えぇそうです、しかしスライム様はそのセットを購入したのと同時、なんなら購入前に既に1枚消費されていたのです。その時点で3枚セットはそもそも3枚ではなくなっており、『2枚の価格で3枚セット』というサービスはその存在が消滅しております。

   したがいまして、実際は2枚の価格で2枚分しか購入されなかったことと同じになるわけでございます。そしてスライム様は既に私に2度会っており、これが3度目、改めて権利をご購入いただくのは道理に叶っております」


ス「…えっ、えぇぇー!…な、なんだそのジャイアンの50円アイスみたいな理論はっ…!通るかっ…そんなもん…!」


シ「ところがどっこい、これが現実、スライム様は払わなくてはならないのです…!

…いいですかスライムさん、あなたのダメな所はそこだ!!何も考えずにホイホイ飛びつく、そして気付いたら失敗・トラブルに巻き込まれ、後になって『説明が足りなかったのが悪い』だの『こんなはずじゃない、これはおかしい』だのと喚く叫ぶ……しかしどんなに喚いた所でもう取り返しのつかない所まで来てしまっており、最早その場の流れに無様に従うより他になす術がなくなっている…。

   こんな考え足らずな者が、戦場で勝てる道理がどこにあると言うんです!違いますかスライムさん!!」

 

ス「…ガ、ガーン…。か、か…返す言葉もない…」

 

シ「以上が私からのアドバイスでございます。では改めまして、『私に会う権利』『オプーナからアドバイスを聞く権利』さらに『私からアドバイスを聞く権利』も後付けですが、ご購入いただきましょうか。

   あ、それからこれはスライム様のお手間を減らすためのお得意様サービスとして無料でのご提案ですが、既に『オプーナに会う権利』をスライム様はご利用済みのため、改めてご購入が必要でございますね。これのためだけに後ほどまた往復のご足労をいただくのは忍びないため、こちらもあらかじめご一緒させていただきます。合計のお会計といたしましては……」

 

 

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…ちーん。そんなこんなで本日もスライムは大赤字(GLBS: 0.50→0.45 (-10%) チャート略)!

 

 

突然のお説教に、さすがのスライムもいつにも増して縮こまってしまった様子…。

でも、「叱ってくれる人を持つことは大きな幸福である」と昔の偉い人も言っていたようだぞ!


さぁ、早く立ち直るんだスライム、もっとも、現状立ち直らなければいけないのはスライム自身ではなく株価でしかないのが心苦しい所であるが…!