毎日を頑張っているのに、なぜか満たされず、
もっと良い仕事がしたいと思っても、「時間がない」と感じてしまう。
それは、時間の使い方ではなく、
“忙しさ”の捉え方に原因があるのかもしれません。
忙しさと充実感は、比例しない
「ちゃんとやっているのに報われない」
「毎日頑張っているのに、焦りだけが残る」
このような感覚は、誰にとっても身に覚えがあるものではないでしょうか。
現代の働く人々の多くが、タスクをこなしても充実感が得られない、
という矛盾に直面しています。
TeamSpiritの調査によると、
9割以上のビジネスパーソンが「仕事を創造的に行いたい」と
考えているにもかかわらず、
実際に実現できている人は約半数にとどまっています。
「できない理由」として最も多く挙がったのが、
「時間がない」(53.9%)という回答です。
つまり、やりたいことと、実際にできていることとの間には
ギャップがあると言えます。
これが報われないと感じる正体ではないでしょうか。
忙しさの正体は、“タスクの量”ではなく“思考のクセ”
忙しいと感じるのは、タスクの量が多いからだけではありません。
むしろ、「何を優先すべきか」が曖昧なまま、すべてに応えようとする思考のクセが、忙しさを増幅させているのです。
たとえば、グレッグ・マキューン著『エッセンシャル思考』では、以下のように述べられています。
「より少なく、しかしより良く」(Less but better)
「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」2014 グレッグ マキューン (著),高橋 璃子 (翻訳)かんき出版
限られたエネルギーを、
本当に価値のあることに集中させる——このシンプルな原則が、
忙しさを手放すための第一歩になると説かれています。
また、オリバー・バークマン著『限りある時間の使い方』でも、
次のような印象的な言葉があります。
「人生は短い。すべてをやることは不可能であると、まず受け入れること」
「限りある時間の使い方」2022 オリバー・バークマン(著)高橋 璃子 (翻訳) かんき出版
時間が足りないのではなく、
すべてをやろうとする前提がそもそも誤っているのです。
そう気づいたとき、私たちは初めて、
自分の時間を自分のために使う選択ができるようになります。
つまり、忙しさから抜け出すためには、
行動量を減らすのではなく、
「何を選び、何を手放すか」を明確にすることがカギになるのです。
「時間がない」と感じるとき、
多くの人は予定やタスクの量を減らそうとします。
けれど、実は問題はそこではなく、
何を優先すべきかが曖昧なまま、
すべてをこなそうとする“思考のクセ”にあります。
時間をうまく使う人は、「選ぶ力」を持っている
興味深いデータがあります。
クロスリバー社のAI分析調査によると、
いわゆる「トップ5%」の社員は、
年間43.2冊の本を読むという結果が出ています。
一般のビジネスパーソンが年間2.4冊という平均値であることを考えると、
これは圧倒的な差です。
しかも、その75%が「忙しい時こそ読書をする」習慣を持っているといいます。
彼らが特別に暇なわけではありません。
むしろ、自分にとって本当に必要な時間を
「選び取っている」という点がポイントです。
このように、時間の使い方に差を生むのは、
単なるスケジュール管理ではなく、
“自分にとって大切なことは何か”を明確にしているかどうかです。
忙しさから自由になるには、“状態を整理する”こと
「忙しい」を減らすために、まずやるべきことは、
今の自分が何に追われているのかを見える化することです。
時間割や予定表を細かく作る必要はありません。
たとえば、
-
なぜその予定を入れたのか
-
それは自分の価値観に沿っているのか
-
本当はやりたくないのに、「やらなければ」と思ってやっていることは何か
こうしたことを一度書き出してみるだけでも、
「忙しさの正体」が見えてきます。
このプロセスは、単なる効率化ではなく、
自分との関係を整理し直す作業でもあります。
時間の質が変われば、人生の実感が変わる
株式会社壺中天の調査では、管理職や高収入者ほど「隙間時間」を
有効に使う意識が高く、
月に1冊以上の読書習慣を持っている割合も高いことが分かっています。
「時間の長さ」ではなく、「時間に対する感度」の違いです。
これは、決して読書が良いという訳ではなく、
日常の中にある小さな余白に、
自分の価値を重ねることができるか、だと思います。
それが、「報われなさ」から抜け出す鍵になるのではないでしょうか。
まとめ
忙しいのは、時間が足りないからではなく、
「思考のクセ」や「選べなさ」からくるものかもしれません。
そして、何を選ぶかを見直すことは、
単に時間の使い方を変えるだけでなく、
自分自身の在り方を整える行為でもあります。
「頑張っているのに報われない」と感じるときこそ、
忙しさの構造に目を向け、
「自分が本当に向かいたい方向」に時間を選び直すことが、
心に余白を生む最初の一歩になります。