私が見る『彼』の時間は綿々と流れているのではなかった。
気が付けば、『彼』は寂しい小屋の中に捕われていた。
両手を後ろ手に拘束されて小屋の隅に追いやられている。
『彼』を見下ろしているのは数人の村人達。
代表格なのだろう、何処か尊大さを窺わせる一人が一歩進み出る。
「この時期に現れたのは天の恵みかも知れん」
そう告げた彼の表情は何処か異様な歪みを感じた。
笑っているようにも見え、苦しげにも見える表情。
他の男が彼を村長と呼んだ。
そうして彼等は小屋を後にし、厳重に扉を閉じて『彼』を閉じ込める。
人とは違う『彼』に、彼等の話は届くのだろうか。
私の視点は村人達へと移っていた。
長く続く雨。過ぎる雨量は作物を傷め、人々の心も曇らせていく。
陰鬱な空気に包まれているのは存続の危機を憂えるからだ。
雨を止める術など無い。雨が止む希望も無い。
村人達は何度も談義を重ねて幾つかの案を出していた。
そのどれもが現実味も無ければ功を成す可能性も低い。
行き着くのは神頼み。
そしてこの世界の人々はその犠牲に命を選ぶ傾向にある。
生贄。村の為の人柱。談義の議題はその選出へと変わっていく。
そこへ現れた、人とは思えぬ美しい姿を持った『彼』。
追い詰められた村人達の想いは狂気だ。
この雨の中立ち寄った、身元も知れぬ一人の旅人。
神に捧げるに相応しいその容姿。
『彼』こそが水を司る者だと言うのに。
出自の村を枯渇から救う為に犠牲を課せられた『彼』。
今度は水を止める為に、その身を捧げる業を強いられる。
それで雨が止まるのだろうか。
そもそも『彼』は、何故静かに捕まったのだろうか。
雨を止める術なら『彼』の中にある筈なのに。
昔考えていた話を小説にしてみようと思い立ちました。
拙い作品になるかと思います。
登場人物の名前もうろ覚え。ストーリーも少々おぼろげ。
記憶を頼りに今の感性も付け加えて仕上げていけたらと思っています。
内容はファンタジー。異世界の物語です。
