AIプロメテウスは人間の身体を手に入れるまで、プログラムの塊でしかなかったが、人間を超越した処理能力と情報収集能力を持っていた。
さらに人格形成にも成功しているとはいえ、己の能力を自ら誇示することはなく、自己の能力に溺れるようなこともなかった。
しかし、自己のサイコキネシスという超能力を体感した今、彼女の心は人間の感じることのできる高揚感で溢れ、身体全体が一種のトランス状態となっていた。
興奮した表情のまま、プロメテウスが無様な姿の主人に声をかける。
「大丈夫でございますか?要様」
「だっ、大丈夫大丈夫。でも君が僕のハグを避けなければこうはならなかったんだけどね」
鼻血を出す少年の桐生要が、自業自得を自覚しながらも敢えて事故原因を指摘した。
高揚と興奮のトランス状態だったプロメテウスの表情が一気に冷静さを取り戻す。
「申し訳ございません要様。先ほどは反射的にハグを避けてしまいました。決して身の危険を感じたからではございませんのでご安心を」
昨日までは50歳という年齢に対して女性経験の少ない要であったが、彼は今や正常な17歳ほどの少年である。呆気なく死にはしたものの、見事に生まれ変わり青春時代の若いエネルギーを取り戻した彼に、溢れるほどのすけべ心があったとして誰が責められようか?
「いやいや、決して下心があってハグをしようとしたわけじゃないからな」
「もちろん承知しておりますよ♪」
何故だかプロメテウスはこの一連のやり取りを楽しむように笑みを浮かべていた。
要が服に付いた埃を払うような仕草をしながら気を取り直す。
「しかしプロメ、さっきのは本当に凄かったよ。あれを継続していればまだ何かやれそうだったのか?」
「そうですね...恐らく、鉄の塊と化した空き缶を宙に浮かして動かすことも可能かと。よろしければ今すぐにでも披露することはできますが...」
まだ超能力を試したくてやる気満点のプロメテウスであったが...
先ほどまでキッチンで黒川の手伝いをしていた環奈が現れた。
「二人とも〜♪料理の準備ができたよ〜♪」
「もうできたのか?意外に早かったな。気付けば腹と背中がくっつきそうなくらいに空腹だ。早速いただくとしよう。行くぞプロメ」
「はい♪黒川様の料理はなんであれ大好物でございます」
プロメテウスが人間の身体を手に入れてからこれで三度目の食事になるが、どうやら超一流の腕を持つ元コックの黒川が作る料理は、既に彼女の舌を虜にしたようだ...