静かなリノリウムの床を歩くと、たくさんのベットに横たわる患者がいる。
その中に、俺の妹 遥がいた。
「おはよう 遥。具合の方はどうだ?」
「お兄ちゃん。来てくれたんだ。気分はそこそこ・・・かな?」
「そうか。それならいい。具合悪い時は言うんだぞ?」
俺はそう言って、花瓶の花を取替えに行った。
第一章。 事の始まり。
ミーンミンミンミンミーーン。ジージージージ。
「今日も暑いな~。ったくこれだから夏は・・・。」
「しょうがないでしょ?夏なんだから。」
「まぁな。それより遥。アイスとかなかったか?」
「ん~もう私の分しかないよ~だ。もし欲しいなら買ってくれば~?」
うわっ面倒な事言いやがって・・・。ったく兄弟とは言え、血は繋がってないんだから
おしとやかな妹で居て欲しかったよな。
これじゃ俺の理想が台無しだ。
とりあえず煙草も切らしてたし買いに行くか。
「分かったよ。じゃあ煙草ついでに買ってくるわ」
俺はそう一言を遥にいって買い物へ出かけた。
俺の家庭は再婚家庭ってやつだ。
母親が死んでからというもの、親父は仕事もやめて、まるで気の抜けたゾンビのような存在になっていたところに、そんな親父を見かねたのか、どこで知り合ったのか知らない今の母親が連れ子と共に一緒に暮らすようになった。
もちろん最初、親父はそんな行動に戸惑っていたし、なんせ年頃の俺が居るものだから、非常に戸惑っていたのだが、再婚相手の母親っていうのがとても押しが強く、なおかつ美人で若いときたものだから、それで落ちない男は居ないってことで・・・・。
なんで・・・あんな親父を選んだのか・・・。
俺にとっては今でも不明である。
本当、俺にはこの世が不思議でならなかった。
そんな思いに耽りながら、コンビニに着くと、一番出会いたくないやつに出会った。
「よぉ海斗。今暇してっか?。なんなら遊ばねぇか?」
俺に話しかけてきたのは、近所に住んでいて、同じ高校に通う藤堂隼人である。
喋り方で分かる通りかなりの馬鹿だ。
しかも、俺の妹にちょっかいを出すとまぁ兄貴としては、油断大敵な相手である。
「今、忙しいんだよ。これから家に帰って煙草吸いながらアイスを食べるという使命がある」
「なに~!俺はアイスよりもランクが下なんですか。どんだけ友達甲斐のない奴なんだよ」
もちろん、俺はこいつを友達と思った事はない。
むしろミジンコだとさえ・・・とまぁそれは言いすぎなわけだが。
「まぁ隼人。そう言うなって。それよりお前の姉なんとかならんか?毎朝俺を起こしにやってくるんだぞ?家族ぐる
みの付き合いとはいえ、さすがに朝は勘弁して欲しいわ」
「俺もやめろっていってるんだけどね。だけどあの姉だろ?俺じゃボコボコにされるよ。なんせこの前なんて高校サボっただけで顔がマンガのように歪むまでビンタされたんだぞ?」
隼人の姉。藤堂沙耶。俺が通う高校の生徒会長で風紀にもっぱらうるさく、しかも空手有段者と来たものだから、ちょっと風紀を乱すような行動をしたことで顔が某アニメのアン○ンマンのようになる。
一度だけ、毎朝起こされるのが嫌になり、寝たふりをしていたらカカトオトシを鳩尾にされた。
その後からは恐怖政治のごとく、起こしに着たら目が勝手に覚めるという脅迫される毎日を送っている。
「そうか。まぁあの豪傑な姉じゃな・・・。お前でも止められるわけないか・・・。」
「そうそう。海斗よくわかってるじゃないか。それより話戻すが今日本当に遊べないのか?一緒にお前の妹と俺の
姉と4人でさ。今日の夕方ある夏祭りに行こうよ。せっかくの夏祭りなんだし・・・な?」
やはり俺より妹が目的ないか・・・。と内心思いつつ。せっかく休みだし夏祭りもいいなと思っていた。
「しょうがねぇな。じゃあとりあえずお前は来なくて良いから、俺と妹とお前の姉の三人で行くわ。それでお前も楽しめるだろ?」
「ごぉほ!!」
どこからそんな声が出たのか。分からない効果音を隼人は出した。
「おいおいそんなにうれしいのか。お前はゆっくり家で休んでろ。なっ?」
「ちょい待ってくれ。どんだけ俺はぞんざいに扱われるんだ?海斗~頼むから4人でっていってくれよ~。友達だろ?」
「分かった。じゃあ俺お金ないからやめておくわ。アイス食べつつ煙草を吸う使命あるし」
「待ってくれよぉ海斗」
情けない声を出して、隼人はしつこく俺の周りを付きまとってきた。
「分かった!!」
急に隼人は何かを思いついたように、声を上げた。
「ん、なんだ?そんなオカマみたいな声上げて」
「どこがオカマやねん!!まぁそれはおいといて・・・これならどうだ?」
隼人はお金は全部俺が持つからと必死にすがりついてきた。
流石に、お金もタダで祭りを楽しめるって言うならしょうがない
「しゃ~ないな~。分かったよ。じゃあ何時頃に集合だ?」
「そうだな~俺はこれから準備があるから17時に春日神社でどうだ?」
春日神社というのは、毎年夏休みに夏祭りや美人コンテストなど様々な行事をやる場所である。
だからこの田舎でも、どこからそんなに人が集まるのかって言うくらい人が集まってくる。
「分かった。じゃあその時間に春日神社前な」
俺はそういい残し。家への帰路についた。
「帰ったぞ~。遥居ないか?」
「ん~何~お兄ちゃん」
とてとてと擬音を立てそうな足取りでアイスをペロペロ食べながらやってきた。
「おい・・行儀悪いぞ。遥。将来お嫁にいけなくなるぞ」
「いいもん!!私、今はお嫁に行くつもりないし。それよりどおしたの?」
いつまでたっても遥は子供だな・・・。俺と同じ歳だっつうのに・・・。
なんなんだこの精神年齢の低さは・・・。まぁ今に始まった事ではないのだが。
「えっとな。隼人が隼人の姉と俺と遥で夏祭りに今夜どうだ?って言われてな。行きたいか?夏祭り」
「ほんと~?行く行く~。ダメだっていっても行くよ~」
「そうか。なら浴衣どっかに閉まってあったろ?それ探してせっかくだし着ていくか」
「そうだね。そうしようかお兄ちゃん。しかし久しぶりだね。一緒に出かけるのなんて。」
何が楽しいのか遥はうきうきしながら浴衣を探しに行った。
さて・・・俺は自分の部屋に戻ってアイス食べながらギターでも弾きながら作曲でもするか。
ジャンジャンジャジャーーーン♪
空を見上げると~俺の心は切なくなる~
どれだけ~遠くを見ても俺の存在は小さく感じる~♪
ん~これはいまいちなフレーズだな・・・。
もっといいフレーズないかな。
「お兄ちゃん~!!お兄ちゃんってば~!!」
あれこれ作曲に夢中になっていると下から遥の声がした。
「もぉ~なんで返事しないの?まったく作曲に夢中になると何も見えなくなるんだから~。お兄ちゃんの悪い癖だよ?」
「なんだ?そんなに怒って。あぁ・・・もう時間なのか・・・今何時だ?」
「もう16時30分だよ?準備しなくていいの?せっかく浴衣見つけたのに・・ぶつぶつ」
どうやら帰ってきてから5時間近く、作曲していたみたいだ。
なのに作詞できたのは4行程度・・・。
これじゃ文化祭のライブに新曲はどうなることやら・・・。
「悪い悪い。もう準備しないとな。」
そう言って、浴衣を着始めた。
「お兄ちゃん。どぉ?似合う」
「ん~似合うも何も。なんだかんだ毎年同じ浴衣だしな・・・」
「そこは似合うっていうの!!乙女心わかってないんだから。」
「乙女心も何も俺らは兄弟だろ?そういうのは隼人にでも言ってもらえ」
「だって私隼人君頭悪そうだから好きじゃないもん」
「そうか。まぁでも今回は隼人が全ておごってくれるから、その事は絶対に本人の前にして言っちゃダメだぞ?タダで飲み食いできなくなる」
俺は念のため、遥にそう言っておいた。
もし、隼人を前にして言ってしまった時には、きっと隼人は泣きながらどっかへ行ってしまう構図が見えたからである。
「分かったよ。お兄ちゃん。じゃあ準備も出来たし春日神社前に向かいましょ♪」
「そうだな。じゃあ向かおうか。」