ラッシュも落ち着いて座る場所がいくつもあった。
隅っこに座るのが好きな僕だが、この日は埋まっていた。メガネをかけた若いリーマンさんが座ってウトウトしていた。
電車で移動中もメールで仕事のやりとりをする事が多い今日この頃。
この日も僕はメールに夢中になっていた。
気がついたらもう下車の駅だった。
慌てて飛びおりた。
もう少しで電車が発車するとこだった。
そしたら後ろからウトウトのメガネのリーマンさんが僕を追ってきた。
音楽を聴いてた僕はイヤフォンを外し立ち止まった。
さっと差し出してきたものは、なんと
僕が車内で慌てて降りる時に落としたキーケースだったのだ。
リーマンさんは再び発車寸前のベルが鳴る電車に素早く戻っていった。
もう、あの隅っこの特等席はリーマンさんが戻った頃には他の誰かが座ってるに違いない。
僕がキーケース落としたばかりに、人様の貴重な時間を奪ってしまった。
それでも見ず知らずの僕にキーケースを走って届けてくれた彼に感謝。
僕のキーケースには職場の鍵や家の鍵がついてて、無くしたらそれはもう大惨事だったから。
世の中捨てたもんじゃないよね。ありがとう。