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ゆく蛍 雲の上まで往ぬべくは







秋風吹くと 雁に告げこせ





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6月初めだったか、深大寺で蛍を観た記事を書きました。↓



http://ameblo.jp/rainbow999/entry-11867382102.html




その時にこれも書きかけて放置したまま・・・


ずいぶん経ってしまいました。




私地方は、いま雨音が聞こえています。




細かな雨粒を孕む空気が


肌にまとわりつく宵には


なにがどうという訳があるでもなく、




セピア色の記憶の中に


亡き人のこどども想い出され、


「もののあはれ」を感ずる宵・・・





ひとのこころというものは


想うに任せぬものですよね。





ひともさりながら、


自分自身のこころさえも、


ままならぬもの なのかもです。















蛍というと想い起こされるのがこんな歌とお話。


『伊勢物語』の中からです。




*《注》旧暦の卯月(四月)・皐月(五月)・


水無月(六月)は「夏」で、文月(七月)は秋となります。


立春のころが、旧暦のお正月時分ですね。*





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(意訳) マジェンタ




むかしむかしのお話・・・





それはたいそう大切に育てられていた


ある人の娘が、


恋い慕う男に、どうにかして添いたいと、


身を焼くような想いを抱きながら


そのことを誰にも言えないまま


恋煩いのせいで次第に弱ってゆき、


ついには起きあがれぬほどになっていた。





死の床で、女はその親に打ち明けた。





その親は、娘の死ぬほどの恋慕の情を、


泣く泣く、男に告げた。





それを聞いた男は、


慌てふためいてやってきたが


女は息絶えてしまった。





男はなすすべもなく


女の家でぼんやりと伏していた。





時節は旧暦六月(みなづき)のつごもり時分。


たいそう暑いころではあるが


宵に入っては、(女への鎮魂に)音楽を奏でていた。


夜も更けてきたころ、しだいに涼しい風も吹いてきた。





蛍が高く飛んでゆく・・・。





男はぼんやりと伏せり


もの悲しい思いでそれを眺めながら


こんな歌を詠んだのだった。








ゆく蛍よ、


お前が雲の上まで昇っていくのならば


もうこの世界では


もの想いのつのる秋風が吹いているよ、と


あの人のいる天への御使いである雁に


どうか伝えておくれ。





なかなか暮れない暑い夏の一日、


もの想いにふけりながら


ぼんやりとあたりを見やっていると、


なにがどうという事でなく


生きてることすべてが


もの悲しくてたまらないことだよ。













【参考】





『伊勢物語』 第45段






むかし、男ありけり。




人のむすめのかしづく、




いかでこの男にものいはむと思ひけり。


うちいでむことかたくやありけむ、


もの病みになりて、死ぬべき時に、




「かくこそ思ひしか」といひけるを、


親、聞きつけて、泣く泣くつげたりければ、







まどひ来たりけれど、




死にければ、




つれづれとこもりをりけり。




時は水無月(みなづき)のつごもり、




いと暑きころほひに、宵は遊びをりて、


夜ふけて、やや涼しき風吹きけり。







蛍たかく飛びあがる。







この男、見ふせりて、







ゆくほたる 雲の上までいぬべくは 


秋風吹くと 雁につげこせ





暮れがたき 夏のひぐらし ながむれば 


そのこととなく ものぞ悲しき










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