【花見山公園】経済原理の前に覆い隠された被曝の危険 | 民の声新聞

【花見山公園】経済原理の前に覆い隠された被曝の危険

依然として高線量の福島市・花見山公園に、間もなく花見シーズンが訪れる。もはや重要な観光資源になっており、町をあげて観光客の呼び込みに力が入る。原発事故から2年が経過し、話題となるのは被曝回避ではなく「復興」。あと一カ月もすれば、復興の象徴として多くの人が訪れる花見山公園。だが、決して忘れてはいけない。ここは汚染地だ。



【除染は市所有の駐車場のみ】

臨時送迎バスが利用する花見山公園入口の駐車場では、3月23日までの予定で除染作業が行われている。

「除去した土は、持って行き場が無いので駐車場に埋めています。特に表示はしませんが、杭を打ってあるので、どこに埋めたかは分かるようになっています」と業者。周辺の砂は、明らかに異質な色で、除染が行われたことをアピールしているかのようだ。手元の線量計は0.23μSV。確かに放射線量は下がっている。しかし、隣接する菜の花畑は、高さ1㍍で0.6μSV。場所によっては1.0μSVを超える。
周辺の住宅でも除染が次々と行われており、庭の一角に仮置きされた汚染土を覆うブルーシートがまぶしい。住宅も市有地も、除染をしても結局、敷地内に保管するしかない。
まだ開店していない茶屋を横目に花見山を登る。両脇の木々は、ようやくつぼみが膨らんできたところ。観光客の姿もない。しかし、除染が行われていないせいか手元の線量計の数値は高い値を示し続けている。福島市によると、渡利地区では住宅除染が優先されており、また公園自体が民有地のため除染の予定はないという。桜が満開になるころには多くの観光客がお弁当を食べるベンチでは、0.9μSVを示した。こんな高線量の山に幼い子どもを連れて来て本当に問題ないのだろうか。

民の声新聞-花見山①
民の声新聞-花見山②
民の声新聞-花見山③

4月6日から交通規制が始まり、本格的な花見シー

ズンを迎える花見山公園。市職員も放射線量の高

さは認めるが「くにが警戒区域に指定していない」と

意に介していない=福島市渡利


【高線量を理由に開放しない発想は無かった】

福島市観光課の男性職員の回答は、全く予想しないものだった。

「福島市は警戒区域にも何にも指定されていない。つまり、放射線量は国の基準を下回っているということです。こうして問われるまで、放射線量が高いということを理由に一般公開を中止するという発想は全然ありませんでした」

男性職員はまた、「慣れてしまったのでしょうか。ここに住んでいる者としては、今の放射線量が高いと感じないんですよね。実際、原発事故直後は福島市内でも空間線量で10-20μSVありましたから」とも話した。この職員は、花見山公園が1.0μSVを超すのが珍しくないほど高濃度に汚染されていることを知っている。だが、それでも「放射線量は高くない」「国の基準を下回っている(警戒区域などに指定されていない)」と言い切る。そこには、経済原理も横たわっていた。

花見山公園は、震災前年の2010年春には過去最高の32万人が訪れた。福島市にとって、いまやドル箱の観光資源なのだ。「三春の滝桜や会津若松の鶴ヶ城などと違い、桜を間近で楽しめるのでリピーターは多い」(同職員)ため、震災で減ったとはいえ一昨年が9万人超、樹木保護を理由に開放区域が限定された昨年は10万4千人が訪れた。今年は、満を持しての全面再開放。花見をメインに据えた日帰りバスツアーも多く組まれ、福島市内の回遊性が増すのは市も認めるところ。さらに「飯坂や土湯など、福島市内の温泉や旅館にとっては、花見山公園での花見を機にお客さんを増やしたいという思惑があるのも事実」と市職員。福島市の最新の広報紙も、トップ項目で花見山公園を取り上げている。もはや、被曝の危険という正論を超越する観光資源になってしまっている。

だが、市職員が漏らしたひと言が、実は市民の本音を如実に表しているのではないか。

「花見山公園の開放より、住宅除染をどんどん進める方が先ではないかという指摘があるのは事実です」
民の声新聞-花見山除染①
民の声新聞-花見山除染②
民の声新聞-1.0μSV超
市有地である駐車場は、除染で表土が剥がされ

新しい砂が撒かれた。汚染土は駐車場の一角に

埋められている。そのため放射線量は下がったが、

少し離れただけで1.0μSVを超すのも現実だ

【データは隠さず全て公表を】

花見山公園のある渡利地区は、高濃度汚染がたびたび大手メディアでも報じられてきた。実際、「渡利学習センター」の裏手を流れる「くるみ川」の河川敷では、依然として1.9μSVを超す高線量。民家の雨どい直下では、20μSVを上回ることも珍しくない。渡利小学校の校庭では、0.4μSVを超した。原発事故から丸2年を経過しても、現在進行形の被曝が続いている。

地区の一角にある公園では、30代の母親が、2歳の息子と5歳の娘を遊ばせていた。数回にわたって砂を入れ替えた公園の放射線量は、0.2μSVを少し超える。「除染をしている公園ですしね、いちいち気にしていたら生活できませんから」。何度耳にしたか分からないセリフ。「市内に室内遊び場が多くできたんだけど、つい近場に来ちゃうんですよね」とも。大熊町出身の父親は、もはやふるさとには帰れないと福島市内に新しい住居を購入したという。

「決めるのはここに住んでいる人。結果的に大げさになっても良いから、全てのデータを公表してほしいですね。隠されるのが一番嫌です。どの場所が、どれだけの放射線量があり、どれだけ危険なのか。それらがすべて公表されて、あとは個々が判断すれば良いんです」

真新しい砂に入れ替えられた公園では、姉弟が走り回っていた。

民の声新聞-花見山公園除染①
民の声新聞-花見山公園除染②
観光客用の駐車場でも、住宅でも、除染で生じた

汚染土は敷地内に仮置きされる。中間貯蔵施設

に移動させるめどは立っていない


(了)