【現地リポート】120日後の福島は今~『被曝の不安』 | 民の声新聞

【現地リポート】120日後の福島は今~『被曝の不安』

JR福島駅近くの浴場受付で働きながら二人の娘を育てている母親の願いはただひとつ、子どもをのびのびと遊ばせてあげることだ。幼稚園と小学校(1年)に通う二人。マスクは欠かせず、暑い日が続くとのぼせるのか鼻血を出すこともあるという。

「小学校では、教室の窓を閉め切り、何台もの扇風機を回して授業を行っている。屋外プールも使えないから、水泳はバスで猪苗代のホテルまで行った。せめて夏休みくらいどこかに旅行をして、子どもたちを屋外でのびのびと遊ばせてあげたい」

本音では、県外に避難をしたい。でもそれも難しい。疎開の話題を耳にするたびに胸が痛む。

「ここでの仕事もあるし、避難や疎開をするといったって当てもない。遠く離れた方が良いのはよくわかっているけれど…」と表情を曇らせる。
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15日午前8時半、東北新幹線・福島駅のホームで測定器は0.30μSV/hを記録。新宿の3倍。福島市役所では1μSV/hを超えた



福島市役所から阿武隈川に向かう途中にある市の児童公園は、数百円で一日遊べる安さが人気だった。だが、今や遊びに来る親子はいない。楽しげな遊具の音楽だけが響く園内で、女性スタッフが悲しそうに話す。

「震災前は2ケタの入園は当たり前で、行列ができることもあった。でももう、誰も来てくれない。昨日もゼロ、今日もゼロ。この辺は放射線の数値が高いのは知っているから仕方ないけれど…寂しいですね」。そうやく土の入れ替えが決まり8月上旬まで臨時休業することになった。だが、再開後に子どもたちの笑顔が戻ってくるとは思えない。


公立学校の給食用に地場野菜を納めていた八百屋では、市の指示で県外産食材へ切り替えた。

「元来、日本では地産地消が当たり前だった。それに、福島の野菜は美味しいのよ。それを食べさせてあげられないのは本当に残念。先生も親も過敏になっているけれど、当たり前。子どもは大人が守ってあげないとね」。街を歩く子どもたちの姿が激減したことを実感する日々。夏休みに県外へ疎開をするという話も多く聞いた。子どもが一斉に避難する夏。

「政治かも東電幹部も、しばらくここで暮らしてみたらよく分かる。ほんの数時間来たって子どもたちのことなんて分かるはずがない。早く震災前の状態に戻してほしい。福島県産の野菜を食べさせたい」
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阿武隈川沿いのサイクリングロードでは2.60μSV/hを記録。すぐ目の前の下水処理場には44万ベクレルもの汚染汚泥が一時保管され続けている



下水処理場で確認された汚染汚泥をどうするか。国が8000ベクレルまでの埋め立てを認めるなか、福島市の下水処理場には44万ベクレルという高濃度汚染汚泥が保管され続けている。

「水分を抜き干草のように乾燥したものを5月に県が測定したら44万ベクレルという値が出た。しかし、再三にわたって国に処分方針を決めるよう求めてもぜんぜん決まらない。スピードこそ必要なのに…」と市職員。現在はコンクリートで封印し24時間体制で監視を続けているという。しかし、これだけの高濃度廃棄物を市で処分することはできず、国の方針決定をひたすら待つのみ。周辺の空間線量を測って公表するしか手立てがない。そうしている間にも、日々新しい生活下水は処理場に集まっており、除染の広がりなどでそれらも汚染していると考えるのが自然だ。

最近、埋め立て処分の基準を10万ベクレルにまで引き上げるとする国の案が報道された。「正直驚いた。近く正式決定されるのだろうが、各地で汚染汚泥が見つかっているから基準値の方をを引き上げようというのか。それで本当に放射能は拡散しないのか」と前出の市職員は怒りを隠さない。
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今夏の営業中止が決まった中央市民プールでは0.58μSV/h。下は来園者数ゼロが続く児童公園


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1ヶ月ぶりに訪れた福島は、街から子どもの姿が消えるという状況に変わりはなかった。むしろ、内部被曝や低線量被曝への不安がより高まっているようにも映った。実際、0.3μSVで設定された測定器は、福島駅を降りてから警報音がならないことはなかった。放射能汚染が確認された下水汚泥や校庭の土は未だ処分されないまま。先の見えない放射能の恐怖に苦悩する現地の様子をリポートする