神奈川県山北町 ミツバ岳(835m) 権現山(1019m)
<参考コースタイム>
JR谷峨駅→(タクシー20分)滝壺橋→(1時間)→ミツバ岳山頂→(50分)権現山→(40分)二本杉峠→(50分)細川橋→(20分)中川温泉・ぶなの湯→(バス50分)小田急線松田駅
<合計徒歩時間>3時間40分
<同伴者>3名
<日帰り温泉>中川温泉 ぶなの湯
ミツバ岳は、2013年に一度登っているが、その時は霧が深く、山頂で見るミツマタの群落と富士山のコラボが見られなかった恨みがある。
そこで今回は、満開のミツマタと晴天を期待した”リベンジ登山”になる。果たして山頂で富士山を見ることができるだろうか?
通常、ミツバ岳の登山ルートは、小田急線新松田駅(または御殿場線松田駅)からバスで「浅瀬入口バス停」か、その先の「細川橋バス停」で下車し、そこからからミツバ岳もしくは権現山に取り付くことになる。
浅瀬入口バス停からは、そのまま権現山((1,19m)を目指すルートと、車道を30分歩いて「滝壺橋」からミツバ岳を目指すルートがある。
ところが、相棒が何かのブログで、御殿場線谷峨駅からタクシーで、直接「滝壺橋」まで行く方法を知り、今回は谷峨駅に集合することにした。
この方法だと、人数によっては松田駅からのバス便と料金はさほど変わらず、しかも浅瀬橋入口バス停から登山口の滝壺橋までの徒歩時間をカットできるメリットがある。
ちなみに谷峨駅にはタクシーが常駐していないので事前に予約する必要がある。料金も迎車料込みで3,640円だから4人だとバス運賃とほぼ変わらなくなる。
タクシーで滝壺橋に乗りつけると、すでに20人以上の登山者が入口付近でスタート準備中。
狭い登山道を抜けるとすぐに急坂に取り付くことになる。
歩き始めてすぐに、道のわきに花が供えてある。つい2週間ほど前(3月12日)に、72歳の女性がこの辺りで30mほど滑落し、死亡したそうだ。
5年前にもやはりこの辺りで、登山ガイドが滑落死しているというから、とくに下山する際には要注意。
ミツバ岳は、近年ミツマタを見るため沢山の登山者が訪れ人気の山になった。しかし今なおガイドマップ(山と高原地図)で破線ルートになってるのは、登山道が整備されていないためだろう。
それは、この山が個人所有であり、その厚意によって入山が可能になったことに原因がある。
歩き始めて20分ほどしたところで、ようやく本日初めてミツマタの花木を見た。
振り返ると、杉木立の間から丹沢湖が見渡せる。
ミツバ岳は本来、大出山(おおだやま)と言っていたそうだが、いつしか「ミツマタの畑」から「ミツバだけ」と誤って呼ばれるようになったらしい。
登山道入口から45分ほど急坂を喘ぎながら登ると、ようやく鬱蒼とした杉林を抜け、ブナやクヌギの明るい広葉樹の林に出た。
この辺りは日当たりが良いせいか、ミツマタの小群落が目につくようになった。
4月の陽気を思わせる日差しを浴びて、頭上を見上げると黄色に染まったミツマタの大群落が見えてきた。
頂上はもう間近だ。
ミツマタ(三椏)はその名の通り、枝が3本に分かれている沈丁花科の花木で、密生した筒状の花は下を向いている。その姿が、まるで蜂の巣のようだともいう。
「三椏や 皆首垂れて 花盛り」(前田普羅)という句もある。
江戸中期(17世紀)ころ、中国から製紙用に輸入された比較的新しい花木だそうだ
本格的な春の訪れにはまだ早いこの季節、殺風景な山中で見るミツマタの花は、どこか駘蕩として心なごむ風景だ。
山頂には、貧相な案内板があるだけで、ミツマタの季節でなければ、あまりパッとしない山に違いない。
もっともこの山は、先に言ったように個人所有の山で、県が管理する山ではないから、山頂の案内板も登山者が勝手に立てたという。
山頂にはすでに20人ほどの先客がいて、ミツマタの群落を愛でている。
しかし3年前に訪れたとときとどうも様子がおかしい。満開の時期にもかかわらず、花数が少なくて、どこか拍子抜けしたような気分だ。
これはどうも自分だけでなく、仲間も他の登山者も一様に、「今年は花が少ない」とボヤいる。
3年前にもすでに、ミツマタが大幅に減ってしまったと言われていたが、それでも初めて訪れる登山者には、驚くべきミツマタの群生であった。
だが今回見た山頂の大群落は、3年前に比べてあまりにも見劣りがする。2年前の大雪の影響だろうか?
3年前の写真(2013年3月30日、山頂で撮影)
さて肝心の富士山だが、今回もほんのわずか麓が見えているだけで、その冠雪した雄姿は厚い雲の中。
気温が高すぎて、春霞が雲になって視界を遮っている。
山頂で20分ほど時間を費やして、次に目指すのは権現山。
ミツバ岳から権現山までは、やはり道不明瞭の破線ルートになる。
しかし尾根筋を踏み外さなければ、この季節まず道迷いはなさそうだ。
権現山への尾根筋にも、ミツマタの小群落が広がり目を楽しませてくれる。
堆積した枯葉を踏みしめながら、40分ほどアップダウンを繰り返して権現山に着。
時刻は11時40分と、ちょうど昼食どき。
山頂の手前の窪地に木のテ-ブルとベンチがあり、そこでバーナーを点けて昼食の準備。
山頂は県の管理下にあるようで、ちゃんと権現山と刻まれた標木がある。登山道もしっかりして破線ではなく実線である。
権現山は、名前の通り、信仰の山だったようだ。
丹沢周辺に権現山と名の付く山が3つあり、この山は麓の地名にちなんで”世附権現”という。
麓の細川橋の登山口に、大きな鳥居のある大室生(おおむれ)神社がある。
権現山山頂
この山は人気らしく、山頂は30人ほどの登山客でにぎわっている。
山頂からは、わずかに雪を残した菰釣山、檜洞丸あたりの山塊も垣間見えている。
山頂で1時間ほどのんびりして、下山開始。
急坂を40分ほど下って二本杉峠の分岐に着。
二本杉峠の分岐に、「小御嶽山大権現」と刻まれた石標がある。
小御嶽山とは、富士山が形成される前からあった古山で、後年(792年)、小御嶽山神社が山岳信仰の聖地として冨士山五合目に創建されたという。古くから多くの崇敬者や修行者に崇拝されたというから、権現山もそれらの修験者が勧請したのだろう。
二本杉峠から北上すると、屏風岩山(1,052m)を経て畦ヶ丸に至る登山道がある。しかしここからは、踏跡不明瞭の破線道になる。
実は、このルートの先にもミツバ岳に負けないほどのミツマタの大群落があり、場合によってはこのルートも考えたが、本日はもうミツマタは満腹状態なので、ここですんなり下山することにした。
われわれは、峠を右折し、中川川の細川橋のバス停を目指すことになる。
登山道入口の上に、立派な鳥居と社殿のある大室生(おおむれ)神社がある。
細川橋のバス停で時刻表を見ると、まだ1時間以上の待ち時間がある。
ぼんやりバス停で待って居ても仕方がないので、上流にある中川温泉でひと風呂浴びることにした。
歩いておよそ20分の距離にある。
途中、初春を告げる房桜を見つけた。
温泉ででゆっくり湯に浸かり、風呂上がりは恒例のビールを買って乾杯。お疲れさん!
温泉でしばらくのんびりして、次バスに乗ると、途中のバス停から山頂で一緒だった登山者が乗り込んできた。
どうやら前のバス便が満員で乗れなかったらしい。われわれもあのままバス停で待っていたら同じ目に合っていたかもしれない。
ヤレヤレ・・。
<日帰り温泉>