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伴に歩んで

ガンと闘った老夫婦の人生日記です。

Sさんというご夫婦の紹介で、同じ町内のFさんというご夫婦と知り合った。

40代の頃である。

とっても物静かな穏やかなご夫婦。

僕がSさんという共通の友人をテニスに誘って仲良くなった。

 

いつも3人で一つの車に乗り、テニスクラブに通った。

Fさんご夫婦の優しい目、穏やかな声は我が子を失った哀しみを飲み込んでのことだったのだろうか。

そう、幼い我が子を失ったご夫婦だった。

事故か病気かは聞けなかった。

 

ある時期、体力の問題でSさんもFさんもテニスを退会した。だから僕だけになった。

寂しかったが仕方ない。

 

そしてつい去年だと思うが、ある日、僕が大学病院で検査を終えてバスに乗ると、ご夫妻が座っていた。

Fさん「おう!」

僕「こんにちは!」

 

それしか言葉は交わさなかったが、相変わらずふたりとも優しい笑みを浮かべていた。

 

その後、わが家も長男が巣立ち、僕は会社を辞め、妻を失った。

様々な出来事が起こり、いつしか二人とは疎遠になっていた。

でもそんなとき、バスのなかで再会したのだ。

自分ではつい最近のように新鮮な思い出だがおそらく数年前、いや十年以上前のことだ。

今になっては大切な友人との出会いだったが、まさか今生の別れになるとは。。

 

今年になって、彼らに会いたいと言う気持ちが強くなり、Sさんの家に前に立った。

でもどう見ても空き家だ。門扉をチェーンで縛ってあった。

そこでしかたなくその裏にあるFさんの家に寄ってみた。

 

空き地になっていた。

 

隣家の奥さんが庭を掃いていたから消息を尋ねた。

「Sさんは離婚して独り住まいだったが少し前にガンで亡くなった。Fさんもガンでなくなり奥様は家を処分して田舎で施設に入られたんよ」

というショッキングな言葉を聞いた。

 

Sさんの離婚は知っていた。

立ち入りはしないがSさんの不誠実さに奥様が愛想をつかして家を出た。

だから同情はしない。

でもFさんの闘病はしらなかった。

優しい笑顔のご主人と奥様がバスに並んで座っている姿が脳裏に浮かんで離れない。

 

隣家の奥様に礼を言って帰り道、「Fさん、どうしてなくなったん?」と、夕景にひとり言を呟いた。さよならもいわずに。。。

 

人生って、人のつながりって、、、どうしてこうも、、、、