面喰


面喰②


面喰③


面喰④


続きです。




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 佐藤は白瀬の言葉を聞いて、身体能力について考えたが、頭がパンクしそうだったのでやめておいた。
 とりあえず署に戻ろうと歩き出したところで、足元に空き缶を見つけた。
(……? もしかしてさっき吹っ飛んだやつか?)
 佐藤は缶を拾う。
(何か手がかりがあるかもしれない……。推理小説の見すぎか?)
 そうは思ったものの、既に目の前で小説やそれ以上に奇奇怪怪な現象を見てしまっている。
 自分の空想的な勘を信じない訳がなかった。




「佐藤、遅いぞ。何やってたんだ?」
 少し先輩の刑事、高橋に声をかけられる。
 あったままを話すわけにもいかないので、
「その、ちょっと、聞き込みに時間がかかって……」
「手に持っている缶は何だ? 油売ってたんだろ」
「あ、すいません」
 佐藤は自分の席に座った。
 周りに知られてはならないが、仮面の男を見つけて捕まえなければならない。
 『情報』である、あの男をどう探せばいいのか。
 見つけたとして、どう捕まえればいいのか。
 捕まえたとして、立件することが出来るのか。
 白瀬あおいと名乗る少女から仮面の男を倒す方法を聞いたときは、それで解決できるような気がした。
 しかし、自分の職業である刑事という視点から見ると、無理難題がいくつも突きつけられていることが分かった。
 『現場で何も見つからなければ、情報を整理してみろ』。
 佐藤は鈴木の言葉を思い出す。
 昔気質で現場主義な鈴木だったが、現代における科学捜査や情報捜査をしっかりと学んでいた。
 そんな鈴木は、現場に何かがあるとは限らない、ということを理解していた。
 物的証拠だけが全てではない。
 情報だとは言え、せめて状況証拠だけでも残していないのか。
 佐藤はファイルに目を通す。
 『カオナシ事件』。
 最初に事件が起きたのは2010年の12月26日。
 マンションの駐車場に死体があるという通報を受け、近くの警察署の警官が向かったところ、例のカオナシ遺体が見つかった。
 検死の結果、死因は窒息死。
 おそらく、白瀬が真犯人だといっていた、八木が犯行を行っていた時は窒息させた後、死後損壊として顔を無くしていたのだろう。
 仮面の男が犯人となってからは、言うまでも無い。
 当たり前といえば当たり前の事だが、口や鼻が無くなれば空気を吸うのは不可能になり、やがて死に至る。
「…………え?」
 佐藤は確かな違和感を覚えた。
 顔が無くなったら、生きていけるはずが無い。
 ならば、何故、あの男は生きているのか。
 梨川郁。
 白瀬の解釈では、あくまで事件の被害者だという話だったのだろうが、それはありえない。
 顔が無いのに生きているというのは、既に人間の域を超えているのだ。
 
 バン! と机をたたき、佐藤は立ち上がる。

「すいません。僕、今から梨川のところ行ってきます!」
「は? 何で!?」
 佐藤は高橋の言葉を無視して、ドアを勢いよく開け放つ。
「ちょ、ちょっと待て!」
 部屋から出て行く佐藤を高橋が追いかける。
「すいません。急いでるんです」
「何で急に梨川なんだ?」
「だって、おかしいと思いませんか?」
「……まさかとは思うが『何で口も鼻もない梨川が生きていられるんですか?』とか言わないよな?」
「………………!? 何で分かったんですか!?」
 佐藤は立ち止まり、高橋に向かい合う。
「お前、資料はちゃんと読めと教わらなかったか?」
「は、はい。ちゃんと読みましたよ。で、死因は窒息死。なのに梨川は死んでない。これはどう考えても──」
「いいから、ちょっと話を聞け」
「……」
「梨川が生きていられるのは、口や鼻が無くても生きられるように手術を受けたからだ」
「え?」
「お前は本人に会ってないから知らんと思うが、梨川は喉から直接気道に空気を取り込んで呼吸できるように手術している」
「そんなの、余計怪しいじゃないですか!」
「お前、さっき話したよな。『鈴木さんは梨川に事情聴取をした』って」
「それがどうしたんですか?」
「口が無い奴に事情聴取なんて普通出来ないだろうが。梨川は口が無くても喋れるように脳波を読み取って音声に変える機械をつけてるんだよ。そして、全ての理由は梨川が顔の筋肉が上手く動かせないって言う病気だったからだ」
「えっと……つまり?」
「お前の予想はハズレ。ただそれだけ」
「…………」
「よし、戻るぞ」
「……はい」
 がっくりと肩を落としながら、佐藤は署に帰った。




 手がかりが無くなった。
 ……ような気がした。
 佐藤はさっきのショックをひきずり、自分の机に突っ伏していた。
(…………他に、何かあったっけ?)
 考える気力を失っていた。
 机に突っ伏した状態で見えるのは、仮面の男に襲われた場所で拾った空き缶だけだ。
 というか、もしあそこであの少女に助けられていなかったらどうなっていたのだろう、と佐藤は身震いした。
(あの、少女? ……あ、そうだ! URL!)
 佐藤は机の上のパソコンを起動させ、脳に刻み込まれているURLのページへアクセスした。
 何でもないページだった。
 どこにでもあるような、都市伝説を扱うページだった。
 何てことの無い書き込みばかりだった。
『あの神社……出るらしいよ』
 とか
『××県にある廃墟は戦争中、傷ついた兵士のための病院になって(ry』
 みたいな書き込みが大半だ。
『○○市で起こってるカオナシ事件って完全犯罪なんじゃない?』
 この書き込みからだった。
『凶器も指紋も見つかってないんだよね~gkbr』
『ゴメン、ソレ、俺』
『宇宙人の仕業とか?w』
『完全犯罪なんて、非科学的です(キリッ』
『犯人はずっと見つかりそうに無いな』
『警察は被害者同士に関係が無さ過ぎて右往左往してんだなww』
『では、私が守護霊に聞いてみますね』
『顔無くなるとかwwww魔法だろwwwww』
『私。魔法使い。』
『顔溶かしたんじゃないの?』
『㍍⊃』
 ほぼ無意味な書き込みが続く。
『実は10件以上起きてるけど警察が隠してるからまだ2件しか起きてないことになってるんだぜ』
『マジで!? これは完全犯罪フラグ』
『まぁ昔からよくあることだし』
『犯人がお偉方の息子だったんだな』
『居なかったんだろ。完全犯罪なんだし』
『今回ばかりは警察を責めれないな。完全犯罪だし』
 不自然に話の方向が完全犯罪で固められていく。
『しょうがないな。これは、完全犯罪だから』

 その文字を読んだ瞬間、頭に激痛が走り佐藤は再び机に突っ伏した。




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どうも。


話が迷走してます。


しかし、まぁ、一応、


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すいません。

情緒不安定で。