一時期騒がれたな。

人に言われていけないのではなく、

それは気持ちが悪いからだ。

気持ち悪い、心地悪いことは大抵すべきではない。

 

三月二日(土)

夜が来た。

HCUの患者はみんななんらかのメカがつながっている。

右のモニターがおそらく呼吸系。

らいあは説明を受けていないが、まあそうだろう。

 

おそらく気道がふさがれるとアラームが鳴る。

鳴りっぱなしもあるが

自然に鳴りやむこともある。

長時間鳴るとアラーム音と灯りがかわる。

それはさすがによくないようだ。

 

しばらくなり続けると看護師さんが来て心音聞いたり痰を吸引したりする。

だが・・鳴らなくても苦しそうに見えることは多く・・・

大抵その後アラームが鳴る。

 

何度かの危機はそのせいだったんじゃあないかと思う・・・。

自動で計る血圧計が作動すると

一時的に脈がすーっと落ちて行く。

 

付き添いの数日間で、

何度かまっすぐな横線になって結構な時間がたつことがあった。

なんとかしないとそのまんま戻らない気がして・・・

ちょっと腕を叩いたりした。

 

呼吸の方はかわらないのに

なぜ脈だけ?・・・と思ったが・・・

これはもう呼吸じゃないのかな・・・・

ただ機械的に酸素を送り込まれてるから動いてるだけなのかな・・・と思いいたる。

 

だったら脈が、ほんとに長時間消えたままだったらそれは死になるのだろうか?

そうなれば呼吸器も外され、楽になるのではないだろうか?

 

 

その夜付き添いは一人だった。

 

ねえ。

次、血圧計が動いて脈がとまったら・・・

なにもしないでいい?

だれもよばないでいい?

 

もし、目の前にいる人がそのままだと死ぬとわかっていて何もしなかったら・・・未必の殺意とかで罪に問われるんだっけ。

でもいいや。

もういいや。

 

まだまだ看護疲れとか言った段階じゃない。

正気のまま、

楽になって欲しいと思い・・・・

そう語りかけた。

聞こえていたろうか?

24時間起きてるわけじゃあないんだろうなあ。

 

30分くらいたったろうか

血圧計は作動して・・・

結構長いこと

横一直線になったのを

ただじっと眺めていた。

 

モニター上のランプもあまり見かけないブルーにかわって・・・

たぶんこのまま。

僕は正気か?

 

 

しばらくしたら

脈?は戻った。

 

ひとりで泣いたけど

この涙は何の涙だったのか。

今もわからない。

 

 

 

なぜ人を殺してはいけないのか。