兄が旅立ちました。
余命1年と言われていましたが、半年で力尽きてしまいました。
緩和ケアの主治医がおっしゃるには、肝臓に転移した癌は巨大だったにも関わらず、痛みを訴えることもなくよく頑張ったと。
生きている兄に最後に会ったのは、私でした。何となく予感はあったのです。
亡くなる前日も病院へ面会に行っていましたが、呼吸のリズムが不規則でときどき止まるように見えたので、慌てて声をかけました。
言っておかなきゃ。伝えておかなきゃ。そんな気持ちになったのです。
「私たちは、10年も会わないほど仲が悪かった?違うよね!高校の夏休み中、兄貴の家にずっと泊まりに行ってたはずだよ。多摩川園前に住んでて…」
涙が出て最後まで言えなかったのは、兄が泣いているのを見たからです。
意識が遠のいて、私の声が聞こえていないと思ったら、泣いて顔をくしゃくしゃにしてた…
私は兄がもう逝ってしまうのだと直感しました。帰りにいつものように「私帰るからね」と声をかけると、兄は目を向けて「ありがとね」と、声にならない声で小さく手を振りました。
それが最後の姿になりました。
