なみだあめはふりません
COかH2SO4かはわかりませんでしたが、レンタカーの中で。
ビルとビルとの小さな隙間にあるコインパーキング。
警察や消防が沢山来て野次馬が囲んで。
二時間くらいであっという間に作業は終わり、騒ぎが起きる前の静かでレンタカーだけがコインパーキングに置かれた状態に戻りました。
あっけらかんと
簡潔で
『こんなもんなんだ』
と思うと同時に
『人間』は『命』がなくなると
『物』として
簡潔に作業の一つとして
片付けられてしまうんだと
思いました。
このような状況だから仕方ないのかもしれないですが
病魔が体全身を巣食い余命いくばくもなく精一杯生きている人がいます
自らの手で寿命を決めてしまう人がいます
ぼくらみんな同じ
弱虫
人間なんだ。
【短編小説】池袋のライオンさん
いけ電車逹が1日の短い仕事納めに入るとき、人と違う命を持つモノたちに向けて大きな汽笛を鳴らす。
池袋東口には西武とパルコが帯のようにJRにしがみついている。
それに比べて靖国通りを挟んで対岸にある三越はちっちゃかった。
三越の入り口にライオンが座っていた。入り口は建物の少しだけ窪んだ所ににあるからライオンは51年間入り口の切り取られた風景しか見たことがなかった。
今晩は珍しく三越のライオンの足元で寝崩れた酔っ払いやホームレスの姿はなかった。
少しは寝られるかとライオンは目をつむって眠気が襲うのを待っていた。
するとそこへ
「ライオンさん、ライオンさん。まだ起きてますか?」
と、小さいかわいいらしい声が頭上から聞こえてきた。視界に入っている
「ああ。起きてるさ。」
「では少し、ライオンさんとお話していいですか」
「いいとも。」
ライオンの前にふわりと降りてきたのは蛍光の白を纏ったまあるい、電灯ウサギだった。
「はじめまして。ライオンさん。」
「オマエは誰だ。見たことがない顔だな。しかもやたらと眩しい」
「はい。私は電灯ウサギと言います。三越の向かいのずっと上で道を照らしているんです。」
「そうか。明るいのはそのせいか。お疲れ様だな。その仕事中のウサギが何の用だ。」
「いえ…その…私は毎日毎日、人間逹が待ち合わせにライオンさんの名前を出すのを聞いて姿を見てみたくなったのです。」
電灯ウサギはライオンの周りをフワリフワリくるくると一周して感嘆の声をあげた。
「うわぁ…ライオンさんはとても勇ましい格好をしているのですね。隣に座っていいですか?」
「構わないが…オレはただの待ち合わせの銅像だぜ」
電灯ウサギはフワリと浮き上がってライオンの隣にちょこんと座った。
「そうですか?私には綺麗なお姿にみえます。」
ライオンからは電灯ウサギの姿は白い光が強すぎて形がボヤけて見えた。
「実はワタシは前々からひとつ心配なことがあったのです。」
「なんだい。言ってみな。」 モジモジする電灯ウサギの姿はとても可愛らしくライオンには見えた。
「あの…あの…毎晩毎晩私たちの光が眩しくてライオンさんは寝れているのかと心配で…」
朝が明けるまで電灯ウサギは明るく道を照らすのが仕事だ。冬は長い時間。夏は照らす時間は短い。
ライオンは驚いた。電灯ウサギの灯りなど気にしたことがなく、酔っ払いの騒ぎ声で寝られないのだから。
「ああ、大丈夫だとも。」ライオンの言葉に 電灯ウサギは肩を撫で下ろした。
「よ、よかったぁ…」
りぃん という小さな音をさせながらふわふわする電灯ウサギの姿を見た ライオンの口元がゆるんだ。
「優しいな、オマエは。大丈夫、心配するな、俺はこれからゆっくり眠れる日々が待っているんだから」
平成21年5月6日
池袋三越 51年で幕をおろした。
おわり。
