数日続けて、ラビットピッグの様子が少しおかしかった。
リビングの端でちょこんと座っているのはいつも通りだが、テレビのリモコンを占領する元気もなく、まつ毛をさわさわする回数も減っている。

「ねえ、おかしくない?」ひよりが声をひそめる。
「確かに……なんか、動きが鈍いな」悠も気づいていた。

母・真理子はラビットピッグのポシェットをのぞきこむ。
「……あら、がじゃりこが残り少ないわ」

小さなスティック状のおやつは、ほとんど底をつきかけていた。
ポシェットを抱え込むラビットピッグは、無表情のまま「はぅー↓」と声を漏らし、母の手を警戒するように避ける。

「全部食べられると思ってるんじゃない?」と健一が苦笑する。
「でも、このままじゃ元気なくなっちゃうよ……」ひよりが心配そうに見つめた。

そこで佐藤家は家族会議を開いた。
「味を確かめて、似たお菓子を探せばいいんじゃないか?」父が提案する。
「でも、どうやって……」母が困った顔をする。

その時、悠がラビットピッグに向かって両手を合わせた。
「なあ、頼む。ちょっとだけでいいから味見させてくれよ」

ひよりも続いて「お願いします!」と拝む。
二人が真剣な顔で頭を下げると、ラビットピッグはじーっと二人を見つめ、やがてポシェットから一本を取り出した。
「ぷくぅ……」
仕方なさそうに差し出す。

「やった!」

家族は恐る恐る、その棒状のおやつをかじってみた。

――サクッ。

「……これ、じゃがりこにそっくりじゃない?」悠が目を丸くする。
「ほんとだ! 食感も味も、ほとんど同じ!」ひよりも興奮して声をあげた。
「なるほど……妖精界の“がじゃりこ”だったのね」母が納得顔でつぶやく。
「じゃあ、人間界の“じゃがりこ”でも大丈夫かもしれないな」父がにやりと笑った。

その日の夜、父は帰りにスーパーへ寄り、本家の「じゃがりこ」を買って帰った。
家族が見守る中、ラビットピッグの前にそっと差し出す。

ラビットピッグはしばらく無表情のまま見つめていたが、
おそるおそる一本をかじった。

――がじゃり。

次の瞬間、小さな耳がぴょこんと動き、目がかすかに輝いた。
「ぷくぅ!」
ラビットピッグは一気に二本、三本と食べ進め、再び元気を取り戻していった。

「よかったぁ……」ひよりが胸をなでおろす。
「ほらな、俺の作戦勝ちだ」悠は得意顔。
「これで解決ね」母も微笑む。
父は得意げに「よし、これからは常備しておこう!」と宣言した。

こうして佐藤家の食卓には、いつも「じゃがりこ」が置かれるようになった。
家族にとってはただのお菓子。
でもラビットピッグにとっては、何よりのごちそうであり、元気の源だった。