とある田舎町の とある小さな商店街に

【魚屋 みん 】と書かれてる看板


このお店の店主・・・ユンホ。町の人からは、ユノと呼ばれている。

ある日の事、店の傍で 動物の鳴き声が・・・

《みゃぁみゃぁ~~》


「ん??・・・あぁぁぁぁーーーっ!店の前に捨てネコかよぉぉぉ!! おぃおぃ~、ウチは魚屋だよぉ、魚屋の前に猫って、、、」




ユノは、町の人たちから頼りにされてる若者です。もちろん老若男女問わず、人気があります。


更に、町内行事も先頭になってやってしまうほどの持ち主・・・。

だからこそ、度々こういう事が起こります。


「そういえば、前にもあったな、、、こんな事、、、。」





そうあれは、1年ほど前の梅雨の季節・・・



今回と同じように、店の前で微かに聞こえる小さな声・・・


《誰かぁ、、僕の事を拾ってくれませんかぁ・・。》


一人の青年が、店の前で膝を抱えながら、道路に向かって話していた。


《なんだこいつ・・・どこかの泊り客か??・・・変わったやつもいるんだな・・・。》




空には雨雲が見え始め、徐々に青空がなくなって灰色の空に変わってきていた。


次第にぽつぽつと雨が降り始め、店の前どころか
商店街にはほとんど客の姿が見当たらなくなっていた。


「今日はもうダメだな、、、早めに切り上げるとするか、、、。」


店の片づけを始めようと外に出たユノの視界に
つい数時間前に見かけた青年の姿が再び目に飛び込んできた。



《ん??あいつ、、ずぶ濡れのまんま まだここに居たのか、、、。このままずぶ濡れのまま野宿するつもりかぁ??、、、おぃおぃ、、、。》





ずぶ濡れのまま、青年はまだ人も車も通らなくなった道路に向かって呼びかけていた。


《誰かぁ、、僕を・・ってくれま・・・。》
「、、、ほらっ、、、。風邪ひくぞ。」



ずぶ濡れのまましゃがみ込んでる青年の前に、傘を差出しユノが声を掛けた。


見上げる青年の瞳は大きく、その上にある眉は、ほんの少しだけ八の字を描くように、どこか困ってるような顔にも見えた。



「あのぉ、、、すみませんが、、、僕を・・ってくれませんか?、、、、。」

困った顔した青年が、道路に向かって言ってた言葉をユノに向かって呟いた。


「んぁ?あぁ~大丈夫、大丈夫。遠慮しなくていいから(笑)」


「あの、、本当に、、大丈夫、、なんですか?」


もう一度、困った顔した青年が、ユノに向かって訪ねてみた。


「 だから大丈夫だって言ってるだろ。何度も言わせるなよ!」

責任感の強いユノは答えると、困った顔した青年の表情か和らいで、片側の目だけがほんの少し弓形に細くなる。

「あ、、ありがとうございます。僕を拾ってくれて、、、」



「そうそう、きみを拾うって・・・・えっ??・・・あれ?・・・えぇぇぇーーーーーーっ!!」

笑ってた楕円の形をしたユノの瞳が、だんだん真顔に変化してほんの少し丸く見開いた。


空は雨模様・・・


困った顔した青年と魚屋の店主との出会い・・・・・


雨で濡れてる瞳の中には、雨とともに滲んでくる
しょっぱい涙を隠していた。