道の駅大谷海岸とは

 道の駅大谷海岸とは、宮城県気仙沼市に位置する。1995年に開業した比較的歴史のある道の駅であるが、2011年の東日本大震災の際に、津波により被災し、嵩上げ工事など長い年月を経て、2019年に仮設復旧、そして2021年に輝かしくグランドオープンをした。

当時はJR気仙沼線の大谷海岸駅と同居する形で設置されたが、JR気仙沼線も線路ごと被災をし、今はBRTによる運行となっている。



  ​線路はなくとも当時の様子を再現

 先述の通り、気仙沼線から鉄のレールは消えたが、BRTの駅としての役割を果たしているので、待合室もあれば時刻表、運行情報版なども設置されている。しかし、駐車場から定刻になるとバスが出発していく様子は、鉄道と比べると少し寂しいものがある。しかし、館内の通路に目を配ると、建物も緩やかにカーブしているのに連動して、床面に二本線が描かれている。

おそらく、当時の線路を描いたもので、当時の情景を少しでも残そうとしたものであろうと考えられる。







  ​三陸の海の幸を生かしたグルメ

映画すずめの戸締まり本編でも、登場人物の芹澤が海鮮ラーメンを美味しそうに啜る様子が忠実に描かれている。看板商品はフカヒレラーメンだが、2500円と値段が張ることと、看板メニュー以外にも押しグルメがあることを伝えたく、海鮮ラーメン1300円を取り上げたとも思われる。


実際にわかめやホタテなど三陸の海の幸がふんだんに取り入れられて、塩味が効いて道の駅と思えないクオリティーである。他にもちらし寿司やカレーなどどれをとってもおいしそうなメニューばかりで、1度の訪問では満足できず、再度訪れたくなることであろう。




ちなみに芹澤が落としてしまったソフトクリームにもフカヒレソフトなるものがあり、400円という安さかつ、不思議な甘さが癖になる味なのでぜひ試してほしい。




  ​道の駅大谷海岸を選んだのは新海誠らしさ

 宮城県に入ってから、映画作中で通り雨に見舞われ、オープンカーの屋根が閉まらなくなるシーンがあるが、おそらく三陸自動車道の天王橋(石巻市)付近で作画当時は道の駅南三陸はまだないとして、三滝堂を無視していることに地理に詳しい人なら分かるかもしれないが、大谷海岸は正面が海というロケーションの良さもあるが、サインデザインの細かな部分に至るまでデザインが非常に優れており、君の名は。の際も、主人公の立花瀧を含む三人がカフェ巡りにて、「木組みがいいね」と建物評論をしているシーンがあることから、自ら建設会社生まれである嗜好から、描きかったのかもしれない。







  ​気仙沼へ浜通りから来てほしい想い

 何人かの方が言及していたが、都内から気仙沼へは若干常磐道の方が通行料金は安いものの、車線数や走行速度から東北道の富谷から仙台北部、三陸道へ入るのが最速と思われるが、浜通りルートの常磐道を通行して、不自然に双葉町や大熊町を国道6号で通過しているシーンがあるが、監督が不自然なことは承知でもどうしても描かさるを得なかった苦渋の思いを感じる。

確かに東北道ですんなり気仙沼へ入ったのでは、「景色が良く、お洒落な道の駅で食べ物も美味しい」で、ただの薄っぺらい旅番組になってしまう。復興車両が通過していたり、常磐道通行止など時代的に矛盾はあるが、「ここもこんなに綺麗な場所なんだな」とセリフにあることから、13年という年月を経て、駅や高速道路などインフラは確かに劇的に良くなったけど、まだ隠の部分や課題が多いことを思いながら訪れてほしいというメッセージが込められている。

13年間の時間を思い出しながら訪問すると、きっと素敵な旅になるのではないだろうか。