こんにちは。

渡邉ひとしです。

 

第327話のテーマは

『企業風土の改革』です。

 

 (ブログは月曜・金曜の投稿です) 

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事業多角化への歴史

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1905年9月に

<鈴木商店>が小林清一郎氏が経営の

<小林製鋼所>を買収して

<神戸製鋼所>として創業しました。

 

1915年8月に

日本海軍から国産初の空気圧縮機を要請され

機械系事業が始まりました。

 

1916年8月に

鉄鋼圧延を開始して

鉄鋼事業が始まりました。

 

1926年4月に

日本初のセメントプラントを完成して

エンジニアリング事業が始まりました。

 

1930年9月に

国産初の電気ショベルを完成して

建機事業が始まりました。

 

1937年2月に

アルミ鋳鍛造事業を開始して

アルミ事業が始まりました。

 

1940年7月に

国内初の溶接棒を製造して

溶接事業が始まりました。

 

1955年12月に

国内初となる金属チタンの

工業生産を開始しました。

 

1962年1月に

東パキスタン向け肥料工場の建設を完了

海外プラント事業が始まりました。

 

2002年11月に

<新日本製鐵><住友金属工業>と

3社間で資本・業務提携しました。

 

2017年10月に

<神戸製鉄所>の高炉を停止し

58年10ヶ月の高炉が消滅しました。

 

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<神戸製鋼>のビジネスモデル

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2017年9月に

<神戸製鋼所>と<USスチール>は

アメリカの合弁生産拠点で

 

自動車向けの高張力鋼板の

生産能力を増強すると発表しました。

 

衝突安全性を確保しながら

車体を軽量化でき

車の燃費性能改善にもつながる

 

車の軽量化に役立つ鋼板を増産して

現地の自動車メーカーなどからの

需要増加に対応する狙いです。

 

2017年10月に

アルミ製部材について強度などの品質基準を

満たしていなかったと発表しました。

 

その後

線材と呼ばれる鉄鋼製品でも

品質データを書き換えて

出荷していたことが明らかになりました。

 

稼ぎ頭の鉄鋼製品での不正発覚により

さらなる信用低下を招くことになりました。

 

<神戸製鋼所>の川崎博也会長兼社長は

 

「不適切な行為でユーザーならびに

消費者の皆様に対しまして

多大なご迷惑をおかけすることを

改めておわびします」

 

と記者会見の冒頭で陳謝しました。

 

アルミ・銅製品の性能データの改ざんは

国内工場で数十年前から

不正が続いてきたことが分かりました。

 

顧客が求める水準を下回った

規格外の製品を出荷することを

 

「トクサイ(特別採用)」

という隠語で呼んでいました。

 

不正のやり方が事実上

「裏マニュアル」化されていたようで

 

担当者が代わるたびに

不正行為が引き継がれていました。

 

アナログ経営の裁量が招く

落とし穴だといえます。

 

一方で1980年代に

日本企業の急激な追い上げから

苦境に立たされたドイツ企業は

 

情報システムや検査部門を

合理化し共通化することで

競争力を高めようとしました。

 

今では企業間をネットワークでつなぎ

自動発注まで行う「インダストリー4.0」

を推進しようとしています。

 

<新日鉄住金>の進藤孝生社長は

都内で開いた記者会見で

 

「神戸鋼から色々な支援などの要請があれば

検討や対応はしていく」と述べています。

 

2017年11月に

<三菱重工業>子会社の

<MHIソリューションテクノロジーズ>から

 

小型可搬型溶接ロボット事業を買収して

事業を統合すると発表しました。

 

既存の据え付け型の溶接ロボットに加えて

事業領域を広げる考えです。

 

2018年1月に

性能データを改ざんした素材や製品を使った

自動車について<トヨタ自動車>が検証して

 

品質や性能が社内基準を満たしたことを

確認したと発表しました。

 

自動車大手からの安全宣言で

品質問題は収束に向けて

一歩前進しましたが

 

国内79拠点の自主点検のうち

70%の拠点で

手続きが不十分とされました。

 

さらに

アルミ・銅担当の執行役員4人のうち

3人が不正を知っていたことも

調査委員会の指摘で分かりました。

 

コンプライアンスの問題の終わりが

なかなか見えてこない状況が続きます。

 

2018年3月には

川崎博也会長兼社長が記者会見で

自らの引責辞任を発表しました。

 

「現場主義の改革派」として

社内の期待を集めて成果も出しましたが

 

不祥事体質の閉鎖的な組織風土を

思うように改革できず

無念の辞任に追い込まれました。

 

同じく2018年3月に

アルミ・銅製部材の

品質データ不正問題を受け

 

2021年3月期までに

データ入力の自動化などに

200億円を投じることを表明しました。

 

2018年4月より

山口貢副社長が社長に就任し

 

川崎博也会長兼社長は特任顧問に

6月から就任することになりました。

 

2018年4月に

超ハイテン(高張力鋼板)材とアルミなど

接合するのが難しかった金属同士を

 

高強度で接合する技術を組み込んだ

ロボットシステムの試作機を

 

軽量化競争が過熱している自動車向けに

<ファナック>と

共同開発したと発表しました。

 

同じく2018年4月に

2018年度の中途採用を過去最高の

427人を採用する計画だと発表しました。

 

不足している品質監査や

現場での品質管理などを中心に

 

即戦力となる人材を配属して

再発防止につなげる考えです。

 

2018年7月に

東京地検特捜部は<神戸製鋼>を法人として

不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪で

立川簡裁に起訴しました。

 

調査報告書によると神鋼の不正は

1970年代に始まり

グループ23拠点で判明しています。

 

役員経験者や社員ら40人以上が

不正を認識したり

関与するなどしていました。

 

2018年10月に

「2019年3月期」の連結純利益が

前期比45%減の見込みと発表しました。

 

データ改ざんによる品質不正問題を起こした

アルミ銅事業の不振が主な要因です。

 

2018年12月に

アメリカでの自動車向けアルミニウム材の

生産能力を2倍に高めると発表しました。

 

衝突安全性や環境面の規制に

より強くて軽いアルミ材の需要が

高まっていることに対応する考えです。

 

2019年1月に

素材や機械など複数の事業を抱える

経営構造は変えないとして

 

「他社との提携やM&Aは十分にあり得る」

と山口貢社長は取材に答えています。

 

不祥事に対する再発防止策は……

 

◉品質検査の自動化のため

 100億~200億円を計上する

◉専門の社員が

 現場の困り事を聞く機会を増やす 

◉社外取締役を3分の1以上にして

 取締役会議長を社外取締役にする

 

などの改革を推進しています。

 

今回の一連の不祥事は

<神戸製鋼>の企業風土に

起因すると考えられます。

 

現場との対話の欠如や

顧客目線が欠落していたことで

必然的に起きた不祥事でした。

 

長年の積み重ねでできあがった

厄介な「企業風土の改革」が

最優先事項の改革になります。

 

*次回のブログは2月4日月曜日です

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今日の事例で何を学べるでしょうか?

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長い歴史を持つ長寿企業は……

それまでに時間をかけて作り上げた

企業文化と企業風土がある。

 

悪しき慣習となった企業風土は

「社内の常識」であり

「固有の伝統」として

会社内で守ろうとする空気が蔓延する。

 

この状態を放置することで

取り返しのつかない

事故や不祥事が発生することを

認識することが必要不可欠である。

 

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【ご連絡先】

未来志向の経営コンサルタント:渡邉ひとし

E-mail:mirai-design@ogaki-tv.ne.jp

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TEL:052-766-6988

Mobile:080-4806-1553

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中部大学 非常勤講師

愛知産業大学 非常勤講師

株式会社 未来デザインカンパニー 

代表取締役 渡邉ひとし

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〔投稿内容〕

投稿文の数字及び企業名などは

日経新聞などの公開情報に基づいた

記述に徹しています。

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