こんにちは、あすなろまどかです。

 

 

 今回は、小説「クリムルーレの花」の続編「キャンコロトンの森」の第1章です。

 

 

 「クリムルーレの花」の第1章はコチラ↓

 

 

 

 「キャンコロトンの森」のもくじ&主な登場人物はコチラ↓

 

 

 

第1章 家庭

 

 アメリカにあるサリースペンス(Sallyspens)というのどかな町の中に、赤い屋根の小さな家がある。

 

 みなさん、この家のことはご存知だろう。そう、ここはクリムルーレ家で、五人の家族が住んでいる。

 

「おはよう、ママ。」

「おはよう、タット。朝ごはんできてるわよ。」

 

 会話を交わしている少年と母親は、タット(Tat)とラチルド(Lachild)である。

 

 彼らは元々メンセル(Mencel)という苗字だったが、父が肺炎で亡くなり、ラチルドがブランケット=クリムルーレ(Blanket Krimroule)という男性と再婚したために、彼らの苗字はクリムルーレとなった。

 

「シャウィーとフィーダは?」

 

「シャウィーは友だちと遊びに行ったわ。フィーダはいつもの所。ベル・フラワーフィールド(美しい花畑)よ。」

 

 シャウィー(Shirwey)は、タットの実弟で、ラチルドの実子である。ひねくれ者だが、友人は多い。

 

 フィーダ(Phoeida)は、タットの義妹で、ラチルドの義娘で、そしてブランケットの実娘だ。彼女もまたひねくれ者だが、シャウィーのそれよりずっと厄介だった。そして、友人と呼べる者は、タットの他には誰もいなかった。

 

 タットとフィーダは、義兄妹で友人どうしだが、恋人どうしでもある。互いにとって、互いが大切なものの全てなのだ。

 

 ベル・フラワーフィールドは、名前の通り、とても美しい花畑だ。サリースペンスの中にあり、花が好きなフィーダは、タットといないときは、たいていいつもここにいた。

 

「おはよう。ラチルド、タット。」

 

 ブランケットが起きてきた。彼はケットと呼ばれており、血は繋がっていないものの、タットにとって良き父であり、ラチルドにとって良き夫である。 

 

「おはよう、ケットさん。」

 

「おはよう、あなた。朝ごはんできてるわよ。コーヒーいる?」

 

「ああ、頼むよ。」

 

 ラチルドがコーヒーを入れている間、ケットはタットに話しかけた。

「タット、夏休みはどうだ。」

 

「すごく楽しいよ。ケットさんがいるから、余計にね。」

 

「僕かい?」

 

「うん。パパがいるって、すごくいい感じ。」

 

「そうか、そうか。」

 

 ケットはそう言って、嬉しそうに微笑んだ。そして、「僕も息子がいるのは、すごくいい感じだよ。」と返した。タットも嬉しくなって、はにかんだ。 

 

 タットは実父のことも大好きで、忘れられないのだが、ケットのことも実父と同じくらい大好きだった。ケットといると、タットはまた父と過ごせる喜びを感じながらも、実父と遊んだ幼い日々や、実父の笑い方をふっと思い出して、少し寂しくなるのだった。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがとう。」

 

 ラチルドが、できたコーヒーをケットに渡した。ラチルドは首をタットの方に向けて、「タットもいる?」と尋ねた。

 

「うん。僕は、砂糖とミルクを入れてほしいな。」

 

「あら。お砂糖は今、切らしてるのよ。ミルクはあるんだけど…。」

 

「じゃあ、コーヒーじゃなくて、ココアを入れてほしいな。僕、ミルクがないコーヒーなんて考えられないから。」

 

「分かったわ。ココアね。」

 

 ラチルドは、にこりと笑ってキッチンへ消えていった。

 

 クリムルーレ家は、今日も平和である。

 

 〜第2章へ続く〜