こんにちは、あすなろまどかです。
今回は、小説「ジキルハイド」のスピンオフ作品「境リコ」の第7話(最終話)です。
第1話はコチラ↓
前回の第6話はコチラ↓
第7話 別れ
やがて、リコとミミが別れるときも、やってきた。空はオレンジ色に染まり、ふたりが乗っている東堂の車の影を、夕日が長く引き延ばしていた。
その影の中に、リコとミミは降り立ち、静かに向き合った。
どこかでヒグラシが鳴いている。それ以外は、とても静かな場所だった。それゆえ言葉を紡ぎにくかったが、リコはなんとか口を開いた。
「じゃあ、さよなら。ミミ」
「うん、さよなら。リ…えっと…ママ」
慣れないようにリコを呼ぶミミに、リコは思わず笑った。リコの胸は温かくなった。
「無理に私をママと呼ばなくていいのよ。私もあなたのこと、娘だと思ってないし」
ミミは、リコを見上げた。
「私たち、親子よりも、相棒の方がずっと似合ってるでしょ?」
リコの言葉を聞き、ミミの顔には喜びと赤みが広がった。ミミは大きくうなずくと、リコの脚に抱きついた。
「リコ、大好き!」
リコはかがみ込むと、同じようにミミを抱きしめた。
「私も大好きよ、ミミ」
やがて、ふたりは名残惜しそうに互いから離れた。
ミミは瞳を潤ませ、静かに尋ねた。
「またどこかで会える?」
「ええ、もちろん」
リコは笑顔で答えた。ミミはホッとしたような顔をした。ミミの手に拳銃が握られておらず、子供らしい顔をしていることが、リコはなにより嬉しかった。
ミミは去っていった。何度もリコを振り返り、何度も手を振りながら去っていった。リコも、ミミが見えなくなるまで手を振り続けた。
ミミがすっかり見えなくなるには、さほど時間はかからなかった。ミミは小さい子供だからだ。
リコはゆっくりと手を下ろし、美しい夕焼け空を見上げた。その瞳に、何か光るものがあるようだった。
「…さ、どこか知らない土地へ行こう。今度はどこの誰を殺そうかしら」
いつものように胸を躍らせながら、しかしいつもより静かに、リコは車に乗り込んだ。
車はどこかの土地へと去っていった。
〜完〜
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