こんにちは、あすなろまどかです。
今回は、映画「Yesterday」の感想の続きを書いていきます。
↓前回の感想その13は、こちらです。
(今回の記事、ちょっと長くなります^^;)
どこかの家の住所が書かれた、謎の紙1枚を残して楽屋から去っていった、2人組の男女。
ジャックはそれを開いて住所を確認すると、家を訪ねることにしました。
場面が変わり、タクシーでその住所の家まで向かうジャック。それは、ひどくこぢんまりとした家でした。
ジャックが扉を叩くと…。
⁇「はい」
出てきたのは、丸メガネをかけた、白髪まじりの老人…。
ここで、自分の目がゆっくりと、大きく開いてゆくのが分かりました。
老人「どなたかな?」
ジャック「…すみません。あなたが、ジョン?」
老人「そうだが?」
ここで、大きく開いた両の瞳から、涙がこぼれ落ちてゆくのが分かりました。とても自然に、静かに、私の瞳はひたすら涙を流し続けました。
ジャック「リヴァプール生まれ?」
ジョン「そうだよ」
ジャック「…会えて光栄です」
この作品の1番の号泣ポイントは、間違いなくここです!!何度観ても、この場面は本当に涙が止まりません。
なんの準備もなしに観ると、せっかくのジョンの姿がサッパリ見えないので、あらかじめハンカチを用意しておくことをオススメします。
(このシーンを観ていて、思ったことなのですが…
この玄関先での会話、なんというか、ジャックとジョンの会話の間(ま)が微妙に噛み合ってない気がする笑 ジョンが若干ジャックを警戒してるような気がします。
でも実際、生きているジョンに会ったらこんなふうになってしまうと思うので、このシーンはリアルな感じがよく表れていて好きです。
先ほど書いた会話の間(ま)もリアルで、これくらいがベストだろう、というちょうどいいものだと思います。)
そしてその後、外の庭らしき所で座って、話をするジャックとジョン。
ジャック「ジョン。今、お幸せですか?」
ジョン「とっても」
ジャック「有名でなくても?」
ジョン「なあに。幸せであるのに、有名になる必要はない。私は毎日の仕事を楽しんで、世界を旅してきた。信じる者のために戦って、勝ってきた。2度、3度と、愛する女性を見つけて、全力で守り抜いた。一緒に生き抜いた」
<中略>
ジョン「生きることは単純じゃない。損も得もある。傲慢に偏見。しかし、人生終わりよければ全て…よしだよ」
ジャック「…」
ジョン「…君の愛の暮らしは?」
ジャック「最悪です。彼女を失った…」
ジョン「では取り返せばいい。幸せを望むなら、深く考えるな。愛する女性がいるなら、好きだと言え。いつでも、誰に対しても、正直でいろ」
ジャック「(立ち上がって)ハグしていいですか?」
ジョン「(少し驚いたように)なに?」
ジャック「あなたに会えて良かった…今おいくつですか…?」
ジョン「78だ」
ジャック「素晴らしい!!78まで生きたんですね…!」
ジョン「…変わった若者だ。(立ち上がる)ハグしたまえ」
ジャック、ジョンを抱きしめる。
どんな恋愛映画よりも、ロマンチックなハグシーンです。
ジョン「1度 心療内科で、診てもらうといい」
ジャック「もう大丈夫です」
ジョンの家を去るジャック。
…長くなってしまいましたが、ジョンとの会話をほぼ全て書き起こしました。だって、すごくいいんですもん、このシーン…!
(この名シーンは、絶対に映像で観た方がいいです!)
観ていると、涙が止まらなくなります。
このシーンには、号泣ポイントが4つ、考察ポイントが2つあります。今から、それを書いていきます。
<号泣ポイント>
①まず、本来は有名人であったはずのジョンが、「有名でなくとも幸せになれる」という考えを抱いていること。これだけでも、何か胸に来るものがあります。
ジョンの「愛してきた女性」の中にシンシアはいたでしょうが、ヨーコはいたかどうか…。これは私の考察なので、実際のところは分かりませんが、ちょっと書いてみます。
<考察ポイント>
①ジョンとヨーコの出逢いにまつわる、有名な話がありますね。ジョンが友人に勧められてヨーコの画廊を訪れ、ヨーコの奇抜な作品に触れて彼女に惹かれる、という。
私は、友人がジョンにヨーコのアートを勧めた理由は、ジョンが音楽活動を通して、精神的に疲れていたからだと思うんです。
もしもその友人が感性の鋭い者であれば、「奇抜なアートを見せれば、ジョンの心の疲れを取ると同時に、彼にいいインスピレーションを与えてくれるかもしれない」と思ったはずです。
そして、友人が感性の鈍い者であったとしても、「奇抜なアートを見せれば、ジョンの心の疲れを取れるかもしれない」と思ったのではないか、と考えているのです。
いずれにしても、ビートルズ解散や家庭崩壊の危機、薬物依存などでボロボロになっていたジョンを少しでも救いたいと思う、優しい友人だったのではないか、と考えます。
長くなってしまいましたが、この「友人が優しい性格だった」という考察は、非常に大きな意味を持ってくると思うんです。
なぜなら、その友人が優しさから、ジョンに画廊を勧めることをしなければ、ジョンはヨーコの奇抜なファッションやセンスを知ることもなく、それに惹かれることもなかったと思うからです。
そうなると、もちろんヨーコと出逢ったり、彼女を愛したり…といった歴史は紡がれません。するとこの世界にはショーンもいないわけで…全ては奇跡や運命なのだと、考えさせられた発言でした。
②奇跡という点でいうと、「ビートルズが存在しない」という「奇跡」を持つこの作品には、なぜそのような悲しい事実ができてしまったのかと考察する余地がありますね。
(そして考察の結果、「ビートルズが存在しない世界」という悲しい奇跡の裏側は、ジョンにとっての嬉しい奇跡であることが分かりました。)
これに関しては、この作品は、ジョンの母親ジュリアが、幼少期のジョンとともに長く過ごした世界を描いているのではないか、と思います。
ジョンの母親ジュリアは、育児放棄をしてジョンを姉に預けたり、ジョンがまだ幼いときに車にはねられて亡くなってしまったりと、幼少期のジョンに対して、充分な親としての愛情を与えられていないんです。
母親の愛情を充分に受けられなかったジョンは、心が荒み、手の付けられない不良青年に育ってしまいました。
そこからエルヴィス・プレスリーの歌声に衝撃を受け、学校をサボってポールとともにギターを弾く生活が始まったわけです。
ギターを始める理由に、エルヴィスの影響はもちろんあったでしょうが、それだけではないと思います。
ジョンは幼少期、母親ジュリアの家にたびたび遊びに行って、バンジョーなどの楽器の演奏の仕方を教わっていました。親子仲は決して悪くなかったのです。この体験も、ジョンが音楽に興味を持った理由のひとつだったはずです。
その教えてくれた母親が亡くなったことで、ジョンは音楽を母親として、それを追いかけたのではないでしょうか。
もしこの考察が正しいならば、ジュリアは相当大きな存在として、この作品を支えていることになりますね。
(「母親ジュリアが生きている」という世界が、「ジョンにとっての嬉しい奇跡」なのです。)
<号泣ポイント>
②次に、「人生終わりよければ全てよし」というジョンのセリフ。ここは単純です。ジョンの人生の終わり(拳銃で撃たれたこと)は、良いものとは言えなかったな…と考え、涙しました。
③それから、「幸せを望むなら、深く考えるな」というセリフ。ああ、なんだかすっごくジョンらしい…!!
ジョンにこんな深いことを力強く言われたら、そりゃハグのひとつもしたくなりますよ…。
④そしてそして、ジャックに年齢を尋ねられ、「78だ」と答えるシーン。78…!ジョンが…あのジョン・レノンが78歳なのだ!!このシーンで、私も思わずジャックに続いて、「素晴らしい!!」と叫んでしまいました。
ジョンが撃たれたという事実は、ビートルズがなければ起きなかった悲劇ですもんね…。
涙は止まることを知らず、その勢いは増してゆきました。
…と、このように、たった1つのシーン(ジョンが玄関の扉を開ける動作から、ジャックがジョンの元を去るシーンまで約2分45秒)に、号泣ポイントが4つ、考察ポイントが2つも詰まっているのです!
これだけ詰め込んで、しかもスッキリさせた製作者はすごいですね。
ああ、一生分泣いた。もう何があっても泣けないでしょう。
さて、この映画の感想は、あともうちょっとだけ続きます。次回は、映画「イエスタデイ」感想その15です!