タイトル「泰然自若として」

わたしは目を覚ました
そのまま階段をくだると 
幽霊が立っていた
幽霊はわたしを見つめて 言った
「お前の想い人を もうすぐ連れていくぞ」
わたしは何も言わずに 
ただ幽霊を見つめた

わたしは大好きな男の子の家に押しかけた
そして彼に もうすぐ彼が死ぬことを伝えた
彼はたいへん落ち着いて うなずいた
部屋は狭くて冷たく
彼の顔は小さくて白かった

わたしは肺炎にかかったときのことを
思い出しながら彼の家を出た
あのとき彼は ただひとり
わたしの見舞いに来てくれた
そのときにわたしは 
彼に心の宝石を託したのだ

愛するひとよ
もうすぐ消えてしまう、
わたしの愛するひとよ
せめて一度でも
わたしに 
ほんとうのあなたを見せてほしかった

愛するひとよ
もうすぐ逝ってしまう、
わたしの愛するひとよ
せめて一度でも
わたしは 
真実のままのふたりになりたかった