こんにちは、あすなろまどかです。
今回は、前回の記事で書いた通り、オールマイティのキャラクターのうちの1人、椎名の過去や家庭環境について書きます。
前回の記事はコチラ↓
※前回の記事で「椎名は現在、叔母さんに育てられている」と書きましたが、
これは親戚の叔母ではなく、血の繋がっていない女性です。
まぎらわしい書き方をしてしまい、すみませんでした。
前回の記事も「椎名は現在、血の繋がっていない女性に育てられている」と書きかえておきました。
※異常に長いですが、都合上、1つの記事に書かなければいけないんです。ご了承ください。
(長い文章を読むのがムリだと言う方は、流し読みでも全く構いません。本編は充分に理解できます。)
年表のように、年齢別に椎名に何が起こったかを書いていきます。
それでは、いきましょう。
0歳:産まれる。本名は「椎名 玉黄(しいな たまこ)」ではなく、「一ツ家 馬鹿(ひとつや ばか)」。
父と母はできちゃった婚であり、馬鹿は望んで産まれてきた子供ではないので、父により適当に命名される。
0歳の頃から、父から虐待を受ける。
4歳:馬鹿、父にレイプされる。
時を同じくして、今まで働いていた父は仕事が面倒になりニートとなる。
同年、お金にこまった母が働き始める。馬鹿は幼稚園をやめざるを得なくなり、朝から晩まで暗い家でお腹をすかせながら母の帰りを待った。
家にいる馬鹿が再び虐待やレイプを受けるのを恐れた母は、アルバイトで貯めた少ない金を父に渡し、パチンコやキャバクラに行かせた。
アルバイトで稼いだ金の半分以上が父のパチンコやキャバクラに消えていく生活だったが、それにより馬鹿への身体的虐待はなくなった。
父はパチンコなどに行くと、長いこと(ひどいときは丸3日)帰ってこないからだ。
5歳:父が不倫相手と結婚し、新しい家庭をもうける。
母とともに残された馬鹿は幼いながらに父を激しく恨むが、母にさとされ、父を恨むのをやめる決意をする。
母「ねえ、馬鹿ちゃん。パパを恨んではいけないわ。
パパが今度こそ、次のおうちでいいパパになってくれることを祈って、私たちは2人で幸せに暮らしましょう」
父がいなくなってからも、馬鹿は夢で父を思い出してうなされた。
母は今までバイトに行っていて、長いこと彼女と一緒に寝ていなかったので、苦しみながら眠る娘の姿を、そのとき初めて見た。
母は時間とお金があって娘と一緒に眠れるときは、必ず彼女を一晩中、抱きしめていた。
その後、「馬鹿」という名前はイヤということで、彼女は「ひとちゃん」と呼んで、と母に頼む(苗字の「一ツ家」から。)。
今まで母は何度も娘に別の名前をつけてあげようとしていたのだが、そうするたびに父が「馬鹿と呼べ!」と激怒するため、そうすることさえできなかった。
6歳:父が、不倫相手の女と彼女との子供3人、計4人をナイフで刺し殺す。父は署へ連行される。
父は「(殺したのは)オレじゃない!前妻だ!」と大ウソを吐く。母は署に連行され、父は解放される。
父は軍手をしてナイフで殺したあと、深夜にこっそりひとちゃんと母の家に忍び込み、母にナイフを握らせ、指紋をつけたのだ。
よって、この殺人事件の犯人は母にされる。
(この事件をキッカケに、ひとちゃん(のちの椎名)は警察を毛嫌いするようになる。)
その後ひとちゃんのいる家に入ってきた父は、再度彼女にレイプする。もちろん、コンドームなどつけずに。
7歳:ある夜、母が署を抜け出してひとちゃんのいる家に帰ってくる(父は既に、どこかへ逃亡していた。)。
痩せ細った彼女は、「ママ、ごめん…パパを恨まずにいるなんて、ムリ」と一言。
母は「そうでしょうね…ムリ言って、本当にごめんね」と彼女を抱きしめた。
その直後、ひとちゃんは苦しそうにし始める。
イヤな予感がした母が彼女を婦人科へ連れていくと、ひとちゃんは妊娠していた。
大急ぎでピルを処方してもらい、何とか事なきを得た。
看護師に
「お母さん、一体どうしてこんなことに?」
と聞かれた母は、耐えかねて、泣きながら今までのことを全て話す。
と、そこへ警官が押しかけてくる。脱走した母を探しにだ。
怒った看護師は、母が今まで受けてきた数々のつらいことを警官に訴えた。
警官「しかし…ナイフの指紋は間違いなくこの女性のものだったのに…」
困惑する警官。取り調べということで、再び署へ連行される母。騒然となる病院。
8歳:数々の証拠や母の言葉から、母でなく父が殺人犯だと分かった。父は逮捕されることになったが、そのときには父はとっくに蒸発していた。
(ひとちゃん(のちの椎名)が16歳の現在も、父は凶悪な殺人犯として全国で指名手配中である。)
ひとちゃんは解放された母と再び暮らせることになるが、母は今まで以上にアルバイトで働かなければ、親子2人生きていけないということが分かっていたので、ひとちゃんと母が再び同じ寝室で眠れたのはたった1日だけだった。
働いても働いても増えない金にこまり果てた母は、「ママと離れたくない!!」と泣きさけぶひとちゃんを、涙ながらに児童養護施設へ出す。こうでもしなければ、幼い娘はお腹をすかせながら死んでしまう。
養護施設では、ひとちゃんはひどいいじめを受けた。ひときわ背が小さく、ボロボロで、ガリガリだったからだ。暴言を吐かれたり、顔面を殴られたりもした。施設を管理する大人も、彼女を助けてはくれなかった。彼女を殴ってくる少年らに、彼女は父を重ねてしまい、男性恐怖症になってしまう。
9歳:ひとちゃんを引き取りたいと、施設に1人の女性がやってくる。ひとちゃんはほとんど人間不信に陥りかかっていたが、女性を見て飛びついた。
その女性は母だった。
可愛げのないひとちゃんが他の人に引き取られなかったことが、彼女と母の再会を招いた。
しかし2人が一緒に過ごせたのは、それからわずか半年だった。長年のムリや苦労がたたり、ある日ついに母は倒れてしまう。駆けつけて手を握ったひとちゃんに、母は泣きながら言葉をかけた。
「バカ…」
その一言をつぶやいた直後に、母は死亡した。
母が亡くなったショックと、再び「馬鹿」と呼ばれたショックとで、ひとちゃんは凍りついてしまう。
(もちろん、母に悪意はない。ただ、朦朧とする意識の中で、娘の本来の名を愛情込めてつぶやいただけなのだ。長年「馬鹿」と呼ばざるを得なかった家庭環境が、母の最期の言葉を哀しいものにしてしまった。)
この2つのショックは、ひとちゃんの心に永遠に残る精神的なトラウマとなった。
彼女は「馬鹿」という言葉を異常に嫌うようになり、そのうち父だけでなく母をも恨むようになる。
(しかし、もちろん心の奥底では母を愛しているので、母が付けていたピン留めを自分が身に付けることにした。のちに椎名になっても、彼女はそれを前髪に付けている。)
翌日、彼女は母の遺体の前で目を覚ました。
目を開けた途端、視界に飛び込んできた、死んだ母の顔に、ひとちゃんはもう耐えきれなくなり、大声を上げて泣いた。
すると隣に住むおばさんが、何事かとひとちゃんの家に入ってきた。おばさんは悲鳴を上げ、警察を呼んだ。力尽きたひとちゃんは、母の遺体が警察に運ばれていくとき、「ママを連れていかないで!!」と叫ぶことができなかった。
ひとちゃんの事情が分かったひとり暮らしのおばさんは、彼女を家に住まわせる。はじめは人間不信でおばさんを嫌っていたひとちゃんだったが、1年ほど経つと、彼女は母のようなおばさんに、すっかり心を許していた。
10歳:ある日、「すぐ帰ってくるから」と出かけたおばさんが、夜になっても戻ってこない。
イヤな予感がしたひとちゃんが外へ飛び出して少し走ると、何やら辺りが大騒ぎとなっていた。彼女が人混みをかき分けて行ってみると、おばさんの遺体が運ばれていくところだった。交通事故だった。
ひとちゃんは母のときと同様、声も出せず、体も動かせなかった。
母とおばさんの死の経験から、ひとちゃんは何かがあったとき、そのチャンスを掴めるようすぐに行動するクセがついた。
ひとちゃんはその日、どこへ行くでもなく歩き続けた。そして、疲れて眠り込んでしまった。
目が覚めたときはもう朝で、彼女は布団の上に寝ていた。飛び起きて、そこにあった階段を降りてみると、知らない男女と、その2人の息子がいた。
男性恐怖症の彼女は、男と息子を見ると泣き出してしまった。驚いた女性が、ひとちゃんに何があったのか尋ねる。ひとちゃんは泣きすぎで過呼吸になったが、落ち着くと、今までのことを全て女性に話した。
女性はひとちゃんに同情し、住まわせてあげると言うが、ひとちゃんは亡くなったおばさんがトラウマになっていた。自分が人に甘えたいのだと分かっていたが、生きる希望をなくしていた彼女は、
「もう誰にも置いていかれたくない、だからひとりぼっちになるの」
と言ってその家から飛び出すと、近くの川に飛び込んだ。
しかし彼女は救助されてしまい、死ねなかった。死にきれなかったことに絶望すると同時に、幼いながらに死の直前の苦しみを知ったことに恐怖していた。彼女はほとんど廃人のようになり、しばらく女性の家の物置き部屋に閉じこもってしまう。
12歳:新しい人たちとの触れ合いや、新しい家族の温かさを知ったひとちゃんは、女性(以下「おばさん」と書く。)のすすめで中学校へ通うことを決意。
しかしその学校でも、彼女はいじめられた。ずっと勉強してこなかったので授業についていけず(当然だ。)、
「おバカちゃん、授業は分かるかい?」
と、1人の男子生徒に言い続けられたのだ。
教師に相談しても取り合ってもらえず、しまいには「アタマが悪いから」という理由で教師からも体罰を受ける。
ひとちゃん、不登校になる。
「馬鹿」は彼女にとっての「名前」であり、ずっと勉強してこなかった彼女の「特徴」でもある。その2つは彼女を執拗に追いかけ回し、彼女を傷付けた。
もう「馬鹿」とは言われたくない、と、ひとちゃんは再びおばさん宅に引きこもり、猛勉強を始める。その勉強漬けの1年を過ごす彼女の姿は、さながら大学を目指す受験生のようだったと、のちにおばさんは語る。
13歳:血のにじむような努力の末(実際ひとちゃんはムリのしすぎで、しょっちゅう体を壊していた。)、やっと知能が同年代に追いついてきたちょうどその頃、1人の男が彼女を訪ねる。
男性(以下「おじさん」)やこの家の息子と過ごすことで、以前よりは男になれ始めていたが、彼女の心がおじさんと息子以外の男を受け入れるのは難しかった。彼女は訪ねてきた男を玄関に放っておき、物置き部屋に逃げる。
そのうち、短い1通の手紙が来る。
「1度だけ君に謝りたい。
決して傷付けないから」
ひとちゃんはしばらくして、返事を返す。
「男になんて会いたくない。
あんたが何者で、何を謝りたいのか知らないけど、用件があるなら手紙でお願いします」
返事はすぐに来た。
「分かりました。
僕は、君が入った学校で君をいじめた男子の、兄です。
弟が本当にごめんなさい。
それを伝えたかった」
おばさんの話によると、この手紙の差し出し人の少年と、その弟の姓は「鹿島」だと言う(「馬鹿」という言葉が嫌いで「鹿」という字にさえ嫌悪感を示したひとちゃんは、初めのうち、この鹿島兄弟がものすごく嫌いだった。)。
大塚家(おばさんの家)と鹿島家は仲が良く、時々、互いの家を訪ねると言う。
そのときおばさんは、うちへ女の子が来たこと、彼女が学校に入ったがいじめられて不登校になったことを、鹿島家の奥さんに話した。
それを聞いてしまった鹿島弟は、「まさか…」と思い、大塚のおばさんに、その女の子の特徴を尋ねた。
大塚のおばさんが話す女の子の特徴と、自分がからかった女の子の特徴が一致した鹿島弟は、頭が真っ白になる。
「ちょっとからかっただけなのに、そんなにあの子を傷付けたのか…」
純粋な彼は、クラスメイトの「おバカ」な女の子が不登校になった理由を初めて知り、ショックを受けた。
落ち込んだ彼は、女の子(ひとちゃん)を気にかけ、ついには彼までも不登校になった。
それを見た鹿島兄が、弟のため、そして女の子のために手紙を書いたと、こういうわけだったのだ。
↑鹿島兄(鹿島 青次郎)。
それを知ったひとちゃんは、鹿島兄に心を許し始める。1度も話したことはないが、彼女は手紙を書き続けた。鹿島兄も返事を書き続けた。それが2人の習慣になっていた。
そして心が安定してきた頃、彼女の前に再び鹿島兄が現れた。ただし、今度は鹿島弟も一緒に。
ひとちゃんは弟の方を見て逃げようとしたが、それより早く、彼は頭を下げて彼女に謝った。兄の方もあとを続けて、彼女に頭を下げた。
こうして、ひとちゃんと鹿島弟は和解。ひとちゃんは鹿島家にちょくちょく行くようになる。
彼女が少しずつまた学校へ通うようになると、鹿島弟もすぐに行くようになった。
ひとちゃんと鹿島弟はクラスも年齢も同じで馬が合ったが、ひとちゃんが好きなのは、最初に彼女に優しくしてくれて、何通も手紙をよこしてくれた鹿島兄の方だった。彼女はいつの間にか、恋に落ちていた。
14歳:ひとちゃんは鹿島兄に告白するも、フラれてしまう。
「君の気持ちは本当に嬉しいんだけど、でも、オレには好きな人がいるんだ。本当にごめん」
そんな丁寧な謝り方だったが、当然彼女はひどく落ち込み、鹿島家にも行かなくなる。体調は崩しがちで、学校もたまに休んでしまう。
そんな彼女を気にかけて頻繁に大塚家を訪ねてきたのは、鹿島弟だった。
彼はひとちゃんを元気づけ、2人で面白い話をたくさんし、そして彼女に一生ついてくる特別な宝物を与えた。
ある日大塚家を訪ねた鹿島弟は、ひとちゃんが生活している部屋で、彼女の制服を見つける。そこには、「一ツ家」と書かれていた。
(人より強い疎外感を抱いている彼女は、自分がまだまだ大塚家に馴染めていないと思っていたので、制服に「大塚」とは書けなかった。)
それを見た鹿島弟は、こんな冗談を言った。
「なんか、「ーッ!」って叫んでるみたいだな」
以下、ひとちゃんと鹿島弟の会話。
ひ「は?」
鹿「ホラ、マンガとかでよくあるじゃん。声にならない叫び声とか出すときさ、「ーッ!」って感じで」
ひ「(少し考えて)…何それ〜笑笑」
鹿「笑笑
オレ「ーッ!」っていう表現好きなんだよね。何となく、魂の叫びみたいで」
ひ「たましい…?」
鹿「…あっ!お前の名前、「しいな たまこ」とかどう?馬鹿はイヤなんだろ?」
ひ「いや、でも私はひとちゃんで…」
鹿「そんなの呼びにくいだろ。あだ名っぽいし」
ひ「う〜ん…
…でも、なんで「しいな たまこ」なの?」
鹿「「たま」「しい」の叫びだよ!
「しい」な「たま」こ!」
ひ「何それ分かりにく〜笑 しかもそれじゃ「しいたま」だし」
鹿「だよなあ〜笑 冗談、冗談」
ひ「………いいかも」
鹿「え?」
ひ「「しいな たまこ」…なんか可愛い名前…よし決めた!
私、「しいな たまこ」になる!」
鹿「え…ホントに?」
ジョークで言ったことが彼女の名前になってしまい、鹿島弟は苦笑した。
こうして、「一ツ家 馬鹿(ひとつや ばか)」という少女は、
「椎名 玉黄(しいな たまこ)」となった。
16歳:鹿島兄弟と同じ高校に進学した椎名は、鹿島弟を通じて、
藤崎マリアらと出逢う。
本編は、椎名と藤崎らの出逢いのあとの物語である。
※藤崎らは、鹿島弟から聞かされたため椎名の過去を知っています。
ここまで読んでくれた方(たぶんいない。)、ありがとうございました。
それでは、さようなら!