こんにちは。結局ペンネームはあすなろまどかとなりました。

 前回お話しした、「小説兼エッセイ」の「あすなろの木」をお送りしたいと思います。(ちなみに、一話完結です。ごくまれに、繋がってることもあるかもしれないけど。)

 この「あすなろの木」は、実話ということもありますし、そうでないときもあります(小説兼エッセイなのでね。)。とりあえず今回はそうでない(小説寄り)です。

 

 

 

 主な登場人物は、以下の六人です(常時追記)。

 

 

・翌檜 茉都華(あすなろ まどか)…まどか。主人公(つまり私のことです。)。一人称は「私」。杉田区立花島(はなしま)高等学校1年B組。学校では浮いている。変なところで勇気がある、と言われたりする。松本君のことが気になっている。趣味が同じの松本君とは話が合いそうなのだが、臆病で陰キャなため、自分から話しかけることができない。

 

・翌檜 亜咲華(あすなろ あさか)…あさか。まどかの妹。一人称は「あさか」。杉田区立花島小学校2年2組。優しく、姉想いな性格。家では明るいが、学校では内気な性格。流されやすいので、まどかに心配されている。年齢の割にませており、まれにまどかより冷静な判断を下す。

 

・まどかとあさかの両親…厳しくも誠実な父親の卓男(たくお)と、ドジだが家族想いな母親の恵(めぐみ)。

 

・三鷹 花子(みたか はなこ)…花子。まどかの親友。一人称は「私」。まどかとは同じクラス。学校では謎の少女と呼ばれている。大人しいが、芯が強く無鉄砲なところがあるので、まどかに心配されている。どこか、まどかに似ているところがあり、お互いそれを自覚している。

 

・松本 太郎(まつもと たろう)…松本君。一人称は「俺」。容姿、学力はまあまあ。まどかとは同じクラスで、人気者のムードメーカー。誰にでも優しく社交的で、生徒とも先生とも、男子とも女子とも、陽キャとも陰キャともオタクとも仲がいい、スーパーボーイ。

 

 

 あ、ちなみに、性格は彼女らをモデルにしていますが、個人名も学校名もまったく違います。彼女らには、モデルにしてもいいか許可をとってあるので、個人情報等はあまり心配しないで下さい。

 

 

 いい加減、本編に入りましょうw

 それでは、どうぞ!

 

 

 

 

第一話 大名行列

 それは、体育館での学年集会が終わって、まだ話し合いを続けている先生方を残し、生徒のみでゾロゾロと教室で帰っていく際に起こった、短くも大きな事件だった。

 それぞれの教室へ帰るために歩いている、自分も含めた大勢の生徒らを見回して、大名行列みたい、などと考えてしまったことが事件の発端であった。私はそのばかみたいな思いつきを、隣にいた花子にベラベラと喋ってしまった。

 この花子こそ、あの事件の真犯人だ。そう言っても過言ではないくらいのとんでもない疑問を、彼女は私に投げかけてしまった。

「なんで大名行列を実際に見たことがないのに、似てると思うの?」

 「教科書で絵を見たことがあるからだよ」、と答えようとした私の口に、もう一人の私が猿轡を巻いてきた。

 絵を見ただけで全てを分かった気になっている、薄っぺらな人間だと花子に捉えられたらたまらない。もう一人の私が、早口でそんなことをささやくのだ。

 私ははじめ、このもう一人の私を真犯人に仕立て上げようと思ったが、そうすることはすぐにやめた。なぜなら、もう一人の私がとった行動はもっぱら正しいものであったからだ。私がもう一人の私だったら、きっと同じことをしていただろう。

 私は、それは確かにその通りだと思った。「教科書で見た」なんてありふれた回答をすることは、絶対に許されない。教科書に載っていることが全て正しいとは、限らないのだ。いや、むしろ歴史の教科書なんて、間違った教えであふれているものではないか。本物の大名行列は、もしかしたらこんなではなかったかもしれない。きっともっと厳かなものだろう。それに、花子は私にハイレベルな質問を投げかけることで、私たちの友情がどれほどのものか、試しているのかもしれない。

 そんなことを考えた私は、なにかすごいことを言って、花子を驚かせたいと思った。しかし悲しいかな、猿轡が解かれた私の口が紡ぎ出した言葉は、私が望んだ注文ではなかった。

「タイムスリップして見てきたんだよ、昨日ね」

 これが、私の口が厳選した単語の並列だそうだ。あまりにもくだらない一言のために使われてしまった倒置法が、自分で使っておきながら哀れに思えた。私は、まだ解かれるべきではなかった猿轡のしめの緩さと、しめを甘くしていたもう一人の私を睨んだ。もう一人の私が、ゴメン、と手を合わせて謝ってくる。私は、はあっとため息をついた。情けない。

 しかしこれは、もう一人の私だけのせいではない。私も、ありふれた回答をすることは嫌だったのだ。それを思った以上、私にも少しばかりの責任を負う義務があるだろう。義理堅い私は、そう考えたのだった。

 私は、わずかに残っている体力とプライドを、切り札として使うことにした。しかしそれは、切り札と呼ぶにはあまりにも大げさなものであり…。

「ウソウソ。ほんとはね、教科書で絵を見たことがあるからだよ」

 今度はもう一人の私が、私に呆れてはあっとため息をついた。すっかり恥ずかしくなった私は、行列に押されて流されていくフリをして、花子から自然に離れていった。

 自分を変わった人間に見せようとする、私のような人間は、誰よりも普通でありふれた、どこにでもいそうな人間になってしまうのである…。

                                                         終

 

 

 

 

 ここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました!