夢想花

夢想花

思いつくままに雑多な思いを書いていきます。

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私が書いた小説です。

ある星に貧しい少女が住んでいました。いいじめられる辛い日々。しかし、彼女はなんと独裁者の娘だったのです。いきなりお姫様としての生活が始まります。信じられないような豪華な暮らし、軍隊をもらってしまって宇宙戦艦を率いての戦争。そんな少女のとんでもない暮らしのお話です。


第一話はここから です。


独裁者の姫君 26-お見舞い

 

 メレッサはダダイヤの総督が手配してくれた別の宇宙船でセダイヤワの自分の宮殿に帰ってきた。打ち身がひどく頭や手足に包帯を巻いたままだった。母や侍女達は戦闘の時、宇宙船中央の安全な部屋にいたので、怪我はなかった。
 メレッサが宇宙船を降りると出迎えた使用人達が彼女の痛ましい姿を見て、一斉に心配してくれる。見かけほどひどくないので、うっとうしく感じながら自分の部屋に戻ってきた。
 自分の部屋が落ち着く、使用人達を部屋から追い払うとベットにドカッと横になった。柔らかい布団の感触でやっと気持ちが楽になった、もう二度とあんな思いはしたくなかった。
 追い払ったのに、すぐに侍女が部屋に入ってきた。
「用件は後にして!」
 今は何もしたくなかった。
「いえ、皇帝陛下がお見えです」
「父が?」
 見ると、もう父は侍女を押しのけて部屋に入ってきた。
 慌ててメレッサは起き上がった。
「起きなくていい」
 父は手で寝てろと合図する。怪我で寝ているわけじゃないのだが。
「大丈夫か?」
 父はベットの端に座った。怪我をしたと聞いて心配して来てくれたのだ。
「大丈夫です。もうほとんど治りました」
 父は包帯を巻いたメレッサの腕を痛々しそうに見ている。
「ひどいのか?」
「いえ、たいした怪我じゃありません。あちこちぶつけちゃって」
「そうか、よかった」
 こんなに優しい父を見たことがなかった。しかも、優しいだけでなく嬉しそうにしている。
「話は聞いた、おまえが指揮を取ったそうだな」
 どうやら、おとり作戦のことらしい。作戦を考えて手順を指示したのは私だが、指揮など取っていない。
「いえ、私はアイデアだけで、戦闘をやったのは艦長です」
「しかし、おまえがブリッジにいたんだろう」
「はい、でも、いただけです」
 こう、答えたがこれも本当は少し違う。途中でブリッジを逃げ出したのだが。
「戦艦の操船や戦闘は艦長がやる、おまえは艦隊全体の動きを命令すればいいんだ」
 父は誇らしげにメレッサをみている。
 どうやら、父は私の命令で艦隊が動いたと誤解しているらしい、私はそんな命令などしなかったのに。でもふと気がついた。あの時、艦長は私の命令を待っていた。自分で知らないうちに指揮を取っていたのかもしれない。
「敵が撃ってくるのに、ブリッジで頑張っていたのか、たいしたものだ」
 父は満足そうにメレッサの顔をみている。
 少し誤解があるとはいえ、ここまで父に褒めてもらうと嬉しかった。
「さすがは俺の娘だ。いい度胸をしている」
 すこし褒めすぎだと思うが、でも、嬉しくておもわず顔がほころんでしまう。
「それに、ルニーに似てかわいいし」
 ミダカの衛兵にブスと言われたのが吹っ飛んでしまった。父に言われると格別にうれしい。
「追ってきたのはミラルスの戦艦なのか?」
 急に父の表情が険しくなった。
「まだ、わかっていません」
 敵の戦艦はそのまま行ってしまったので、国籍はわからないままだ。
「まず、ミラルスだな。お前を人質にして帝国からの攻撃の盾にしようとしたんだろう」
 父は顔を上げた、怒りに顔をこわばらせている。
「ミラスル王は許せん。ミラルスを攻める」
 父なら当然だろう、娘を襲われて黙っているような父ではない。
「ミラルスを叩き潰す、お前の手でミラルス王の首をはねるといい」
 父は、またいつものような怖い顔になった。しかも言っていることがかなり極端だ。
 首をはねるって、いったいどういう意味だろう。比喩的な意味じゃないかもしれない。
「首を跳ねる?」
「お前が襲われたんだから、お前がやれ」
「剣で……」
「あたりまえだ、棒では無理だろう」
 父は当然だというように言う。
「いえ、私は遠慮します」
 いくらなんでも、実際に首を切り落とすようなことが出来るわけがない。
「バカ、そのくらい出来るようになれ」
 父は怖い顔で睨む。
 メレッサは笑いでごまかすしかなかった。
「お前には一個旅団やろう、それで戦え」
 また、びっくりするような話が出てくる。
「あの、私も戦争に行くんですか?」
「もちろんだ、お前は左翼を守れ」
 父は、当たり前だろうというように言う。
 左翼とか言われてもどこを守るのかわからない。
「どうしても、行かなければだめですか?」
「バカ、俺の娘だろう。ジョル、ルシール、フォランも連れていく」
 父はだんだん機嫌が悪くなってきた。もう、これ以上父に逆らえない。それに、兄弟も行くのなら、父の娘として仕方のない事なのだろう。
 メレッサが仕方なくうなずくと、父は立ち上がった。
「ルニーも怪我してるのか?」
 母の事を心配している、母は避難用の部屋にいたから怪我はしていなかったが、父に母の所にも行って欲しかった。
「ええ」
 思わず嘘をついてしまった。
「そうか、ちょっと寄ってみる」
 父はちょっと手をあげると、そのまま部屋から出ていった。


 その夜、ジョルとルシールが花束を持ってお見舞いに来てくれた。そんなにひどい怪我じゃないのに。
「わあ、ありがとう」
 大きな花束をもらってうれしかった。
「生けておきます」
 侍女が引き取ってくれる。
 メレッサは二人を居間に案内した。居間には母もいた。
「あんたが、自分で指揮したんだって」
 ルシールが驚いている。
「違うよ、あれは、たんなる噂。あたしは隠れていただけ」
 どうも、会う人ごとに同じ事を聞かれる、指揮なんかしていないのに。
「でも、メレッサはブリッジにいたんだろう」
 ジョルが聞く。
「戦いがどうなるか見たかったの」
「ブリッジにいたら、君が指揮しなきゃ」
「指揮なんかしてないって!」
 そう言ったが、しかし、みんな私の命令を待っていた。私が指揮をしたのかもしれない。
「おば様も、ブリッジにいらしたんですか?」
 ルシールが母に聞く。
「私は、避難用の部屋にいました。まさかメレッサが戦闘を指揮していたなんってビックリです」
「だから、指揮なんかしてないって」
 どうも、みんなからからかわれているみたいだ。

「怪我はひどいの?」
 ルシールが聞いてくれる、兄弟からこんな言葉をかけられると嬉しくなる。
「いえ、この娘ね、大げさに包帯なんか巻いてるからビックリしちゃうけど、包帯とったら怪我を探さなきゃいけないくらいなの」
 母がちゃかしながら笑ってる。
「失礼ね、これはお医者さんが巻いてくれたの、怪我がひどいからよ」
 メレッサはむすっとして答えた。
「ミラルスはひどいわね、絶対にこの仕返しはしなくちゃ、ここで下がったらバカにされるわ」
 ルシールが憤慨している。
「父さんが、すぐにでも出陣するよ。多分、俺たちも連れていかれるな」
 ジョルとルシールは顔を見合わせた、ルシールは行きたくなさそうにしている。
「あんたも、絶対に連れ出されるね。一番先頭をやらされるかもよ」
 ルシールが脅かすように言う。
「あたしは左翼だって、左翼ってどこ?」
「本隊の左側さ、まあ、安全な所だな」
「敵が正面にいるとは限らないわよ。左にいたら、あんたがぶつかることになるのよ」
 ルシールが脅す、彼女はメレッサを脅かして楽しんでいるようだ。
「ルシール姉さんはどこなのよ?」
「あたしはいつも、後ろ。絶対に安全な所ね」
「後ろは何の役にもたっていないと思うんだけどね」
 ジョルがバカにしたように言う。
「敵が後ろから攻めてくるのを防ぐのよ、役に立ってるわよ」
「兄さんはどこ?」
「君が左翼なら、多分右翼だな。ルシールと違って重要な場所だよ」
「あたしの場所も重要よ」
 ルシールがムキになっている。
「あたし、戦場に行くのは始めてだから、いろいろ教えてね?」
 メレッサは戦争に行っても、どうしていいのかまったく分からないから、この二人が頼りだった。特にルシールは世話好きだから頼りになる。
「よく、言うよ。戦艦同士の撃ち合いをやったくせに。あんな、撃ち合いは父さんだって経験したことがないよ」
 それはそうかもしれないが、でも、大艦隊で戦う戦争は経験がない。
「意地悪しないで、教えてよ」
「別に難しくない。旗艦に乗って父さんの指示どおりに艦隊を動かせばいいだけだよ。旗艦は後方にいるから、敵の砲撃が飛んでくるなんてことはない」
 ジョルが説明すると。
「敵の砲撃が旗艦までくるようになったら大敗北ね、その時は旗艦だけさっさと逃げればいい」
 ルシールが気楽に補足してくれた。ルシールなら、あっさり部下を見捨てて逃げるかもしれない。
「なんとなく分かったわ、戦場で分からないことがあったら聞くから教えてね」
「了解」
 ジョルはやさしく応じてくれた。
 戦争は怖かったが兄弟達と一緒かと思うと楽しそうでもあった。どこか、家族旅行にでも行く気分だった。
 その日は夜遅くまで、兄弟とおしゃべりを楽しんだ。