本家のある地域では今でも屋号が使われています。
ご近所さんに同じ苗字が多いこともあり、普段の会話は屋号で話しているんですね。
実家は本家からの分家なので、屋号は「〇〇(本家)の新宅(分家の意味)」と名乗っていました。
意味はわからなくても、幼い頃からそういうものだ。と育ってきていたので疑問にも思わず。
本家近隣の人に身分を明かすときには屋号!が染み付いていました。
確か高校生くらいの頃、こんなことがありました。
本家に集まってもやることもなく。ヒマ過ぎて本家周辺をウロウロと歩いていると・・・。
ひとりのおばあちゃんが、不思議そうにじ〜っとこちらを見ています。
その辺りは農家さんが多い土地。おばあちゃんの服装は、THE 農家スタイル!確実にご近所さん。
普段見かけない人がウロウロしていたから気になった様子。とうとう声を掛けられます。
「おめぇさん、どこのもんだべ?」
こんなときこそ屋号の出番!
にこやかに対応します。
「〇〇の新宅の娘です。(ニコニコ)」
「そっけ、〇〇の新宅んとこの子け、□□(父の名)さんの娘さんけぇ。」
「はい!(ニコニコ)」
「□□さんによぉく似てんなぁ〜。」
うんうん、と笑顔でうなずいたおばあちゃん、どうやら納得した様子でその場を去ります。
無事に乗り切ったわたしはホッとしつつ、内心
おばあちゃん誰!?
というハテナが頭を離れません。
後々父に
かくかくしかじか、こんなことがあったよ!
と伝えても
「あそこの家の人かなぁ〜。」
結局わからずじまい。
うん、まぁ、いっか!
今の世の中、白か黒か。善か悪か。
ハッキリするべし!というような風潮がありますよね。
でも
謎がすべて解き明かされなくても。グレーでも。どっちつかずでも。
そんなときがあっても、いいんじゃない?
もっとゆるく考えてもいいと思うのです。
なんて言っておきながら。
このエッセイを書いて思うことは
あのおばあちゃん、一体誰だったんだろう??