静かな部屋の中で、カチャカチャと、小さなモノを弄る音がする。

息をするのも気を遣うような、
そんな雰囲気

「ここを。こう、このマヨリテの方陣のように」

静寂を割る言葉を、魔術師は本を広げて指さす。
技師は手を止め、
棚から本を取り出し、

「こいつとこいつ、どっちの方がこれに近い?」

不器用な言い方に苦笑いしながら、
魔法使いは二つの本を読み

「こちらですね」
と告げた

機械魔道具・寄り添う小さきモノたち1

外は高い塔がそびえ立ち、
行き交う乗り物が、空を占拠していた。

時の政府は、食糧問題も、住居の問題も、ライフラインの問題も、すべて解決した
と、言っていた。

しかし、
それは塔に住む者たちへの言葉で
地上に住む者たちへの言葉ではなかった。

いつの間にかに、国民とも、市民とも思われていなかった地上に住む者たちは愕然とした。

塔に住む者に抗議に行こうにも、
入り口には鋼鉄の獣が、
近づく者を無慈悲に排除していた。

機械魔導具・寄り添う小さきモノたち2

街に住む者は困り果てた。

食べるものは畑がある。
けれど、それ以外は?
電気は?
明かりは?
車は?
寒いときはどうすればいい?
犯罪が起きたらどうすればいい?

困り果てていたときに、
唐突に。
本当に唐突に現れたのが
魔法使いたちだった。

機械魔導具・寄り添う小さきモノたち3

魔法使いは森の奥。
人から離れて、人から隠れて過ごしている。
と、寝物語的な存在であった。

何故、今、現れたのかはわからないし、知らない。

彼らはその一切の知識を、惜しむことなく人に与えた。

それは本当に魔法だった。

火を使う魔法や、道具は、何故動くのか、それが発動するのか、わからないままに、
不自由な生活を、ほんの少し豊かにしてくれた。

とはいえ、こちらも一切の技術が消え去ったわけでもなかった。
街には生活必需品を直したりする者が一部いたのだから。

技師は、魔法の道具を、
なんとか、みんなに使えるように出来る技術を
と、資料を持ち寄り、
魔力のない人間でも扱えるように、

魔法使いと一緒に、
基本的なモノを、作っているところだった。

機械魔導具・寄り添う小さきモノたち4


魔力で描く光の魔方陣は、
歯車を寄り添わせて

必要とされる媒介は、結晶鉱物で

結晶鉱物の独特の振動は、魔力の代わりになり、
それは微細だが、電力のように歯車を動かす。

足りない知識は、出し合い、説明しあって補っていった。

そうして出来た機械仕掛けの魔道具は

心臓が動くように、
カチカチ・・・チチチ・・・と、音を刻んでいた。

機械魔導具・寄り添う小さきモノたち5

今日も子供たちが、森へやってくる。

魔法を使えるように、
この世界で不自由なく、生きて行くには、その知識が必要になったから。

けれども、
もう、それもできなくなった者たちは

技師と魔法使いの熱い想いで出来た、機械魔道具を使って

日々を過ごしていく