その黒い竜は友達が欲しかった。

黒竜吐息1

一見トカゲのような容貌で、
とかげよりもちょっと…だいぶ大きい。

昔からこの山にひっそりと住んでいるため、
代を重ねて羽根はお飾り程度になってしまった。

かつてはこの山にも、竜は沢山いたのよ。

と、随分前に祖母に話は聞いている。

けれどその時には、もう祖母と二人きりだったし
その祖母も、とうの昔に亡くなっている。

昔を思い起こして溜息をついた

黒竜吐息2

ゴーッ
と、口から吐き出される赤い炎。

これもまた。一人きりの原因だ。

竜はゴロリとふて寝した。

何せ住処は炎の山。

何度も何度も噴火して
遠くから見ると、今も火口から煙が上がるような場所。

岩肌ばかりで何もない。

それでも、昔は樹が生えていたり、花が咲いていたりしていたようなのだけれども。

そういうのは時々やってくる、鳥の話を伝え聞くのみ。

その鳥も、この間

いいなぁ…って、溜息をついたら、口から火が出てしまって怪我をさせてしまった。

鳥の噂は早いので、あっというまに知れ渡り…
今では鳥も遠のいてしまった。

黒竜吐息3

火を吐く竜は、おとぎ話になっていて、
人の間に伝わっているようだ。

困ったことに、
竜が守っているのは財宝
なんていう話があるようで、それを狙って時々大挙して押しかけてくる

最後にあったのは、まだ祖母がいたときで
自分はその時から寂しかったから、嬉しくて嬉しくて…
嬉しくて火を吐き周りながら遊んでもらおうと突進していったんだけど、
半分逃げて、半分遊んでくれて
でも、
遊んでくれた人はみんな怪我しちゃって。。。自分も尻尾に怪我してしまって
それに気がついた祖母が無茶苦茶に怒って
全員燃やしちゃったんだよね。。。
危ないことはするんじゃない。って怒られて、初めて殺されそうになったことを知ったんだ

はーっ。
遊んでくれたんじゃなかったんだなーって、
ちょっと寂しくなったんだよ。

本当。
独りってつまらない。。。

黒竜吐息4

そんなことを思っていると、
なにやらカタカタと音がする。

ろくなコトを思い出していなかったので、
いつもより何割か重たくなった気がする身体を引きずって外に出て行った。

いったいなんなんだよー

外には、人か一匹。
なにやら大きな荷物を持って、呆然と自分を見上げている。

人…?
!!!また殺されちゃうの!?

ついさっきまで思い出していたことを思い出して、辺りをキョロキョロと見回す。

なんにもない場所だから、誰か他にいればすぐにわかる。

目の前の人しかいない。

ええと、お祖母ちゃんはこういうときなんて言うって言ってたっけな
と思い出しながら、低い声で唸った

「人間が!なんのようだ!!グアーッ」

火が当たらないように注意しながら火を吹いた。

その人はポケラーッとしていたが、火を見た瞬間に目を輝かせた。

「人の言葉を話すなら、私の言葉もわかるわね!お願い!その火を私に貸して!」

黒竜吐息5

話を聞くと、その人は、鍛冶屋をやっているのだそうで

鍛冶屋とは、武器を作ったり直したりするのだそうだ。

武器ってどんなの?という問いには、自分の爪や、牙みたいなもんらしい。
そういえば、自分を怪我させた人間は、爪のような長い物を持っていた気がする。

その人はそういうのを、極めるためにここに来たって言ってた。

「本当はあっつーい、溶岩を使いたかったのよ。
でもそれって、ちょっと大がかりな装置が必要じゃない?
どうしよっかなーって、悩んでいたのよね」

なにやら台とか、石とかを、背中の袋から取りだして組み立てている。

「でも君の炎を見た時に閃いちゃったの!
貴方が火を吐いてくれれば、それって問題解決じゃない?」

にこっと笑う。

この炎が役に立つ!?

心が躍るようだった。

「じゃあ…じゃあ。
自分と友達になってくれる?!」

彼女は「うんっ!」
と太陽みたいに笑った。

大鎌・黒竜吐息