彼女をこの家と町から連れ出すことを決意した友人

彼女の両親に伝えると、

「好きにしたらいい」

弟は彼女と離れるのは嫌がっていたが…
今のどうしようもない現状は理解している

納得してくれた



だが、同棲はできない
彼女をひとりにしたくない

友人は両親に事情を話し、協力を得ようとしたが…

「なにを考えてる?その子と将来は結婚するのか?」

「わからない…ただ放っておけないんだ…」

「協力はできないわ、結婚するかもわからない子を面倒見るなんて…」

当然といえば当然の反応だ

だが、捨てる神あれば拾う神あり
それまでただ聞くだけだった友人の祖母が突然口を開いた

「わたしに任せなさい」

「母さん、いったいなにを」

「そうですよお義母さん」

「あんた達には迷惑をかけない、ウチに来るといい」


理由を聞くと、

「ばあちゃんの贖罪なの…
昔ね、ばあちゃんの働いていた会社に彼女と似たような娘が入ってきてね…
仕事を覚えるのが他の人の倍以上かかったけど、とても丁寧な仕事をしてたの
仕事ができないんじゃなくて、覚えるのが遅いだけ…
でも職場で浮いちゃうの、上司も仕事の遅い彼女を疎ましく思っていてね
今みたいにハラスメントなんて概念すらなかった時代だから…
ばあちゃんの知らないところでイジメもあったのかもしれない…
いたたまれなくなって辞めていったの… 
その時のばあちゃんにはなんの力も無くて…上司も周りも誰も説得できなかった…
今でも思い出すくらい悔しくて、哀しくて…」

「ばあちゃんのせいじゃ…」

「中途半端な完成度で速い仕事と、ゆっくりだけど綺麗で完成度の高い仕事…ばあちゃんは後者の方が良いと思っていたの…
でもね、中途半端でも完成が速いとそれが評価されてしまうの…説明してもわかってもらえなくて…」


「大丈夫、彼女のことは任せなさい なんの心配もいらない」





                                                            続