2024年3月6日

平凡社

 

韓国を代表する日本文学の翻訳家クォン・ナミさんのエッセイです。

30年のキャリアを持ち、村上春樹のエッセイ、小川糸、恩田陸、群ようこなど、300以上の作品を手がけています。

 

 

日本語を選択したのは、三島由紀夫の『金閣寺』を読んだから。

 

はじめて読んだ日本小説の感想は、何とも言えないゾクゾク感だったそうです。

 

その後、クォン・ナミさんは日本に留学しますが、帰国後は就職できず、しばらくニート生活を送ります。

 

朝食後に読書、昼食後に読書、夕食後に読書という、何とも羨ましい(?)生活を送るうちに見つけた「暇つぶし」が、留学中に買った日本の小説を翻訳することでした。

 

やがて、数人を介して知り合った小説家が、出版社を紹介してくれ……

 

 

 

著者は「私の翻訳人生の8割は運」といいますが、もちろん努力は惜しんでいません。

 

書店に通い、今何が読まれているかリサーチする

たくさんの本を読んで、いい作家を見抜く目を養う

つまらない本も読んでいて、本当にプロだなと思います。

 

駆け出しの翻訳家時代、出版社にいいように使われ、悔しい思いもしています。

 

 

本書では、翻訳家のリアルな日常も描かれていて、原稿料の話なども赤裸々。

翻訳家になりたい人へのアドバイスや直訳と翻訳の違いなど、実際の例もあげられていて、翻訳物を読む側にとっても興味深い内容です。

 

おもしろかったのは、「訳者あとがき」

 

えっと、本書の訳者あとがきではなくて(それももちろん悪くない)、クォン・ナミさんが翻訳した日本の文学につけられた「あとがき」ですね。

 

 

川上未映子『乳と卵』、村上龍『エクスタシー』、浅田次郎『姫椿』、貴志祐介『天使の囀り』、絲山秋子『袋小路の男』などの「あとがき」を読むことができます。

 

 

クォン・ナミさんは、「浅田次郎の『天国までの百マイル』は涙と鼻水まみれで読んだが、『姫椿』は最初から最後まで微笑みながら読んだ」そうです。

 

 

率直で飾りのない文章がとても心地良い。

 

 

そのへんの雰囲気がうまく出ている、これも気合の入った日本語訳です。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにクォン・ミナと検索すると、全然違う人が出てきます。

(やっちまった人)

 

 

おつき合いありがとうございます。