2024年8月14日

太田出版

1,900円(税別)

 

 

本のタイトルになっている「家から5分の旅館に泊まる」は、スズキナオさんが住む大阪の都島にある「くず乃は旅館」に泊るお話。

 

以前から気になっていたという「住宅街にポツンと建っている旅館」に泊り、旅館の人に話を聞く。

 

近所なのに、「おすすめの飲食店を」聞いたりして、中華料理店でラーメンを食べる。

 

こういうのも「旅」だなと思う。

 

 

 

太田出版のウェブマガジン「OHTABOOK STAND」で、2022年2月から2024年1月まで連載された「自分を捨てる旅」をまとめたものです。

 

金銭的にもスケジュール的にも制約があったとのことですが、ちょうどJR西日本が販売していた「サイコロきっぷ」なるものも活用して、尾道や博多にも行っています。

 

ガイドブックをなぞるような旅ではなく、足の向くまま、気の向くまま、行き当たりばったりで温泉に巡り合ったり……

 

要町の「山の湯」の閉業前に行く話と、82歳のママがやってる屋台に入る回がいい。

(結構、全部いいです)

 

写真もバシバシ撮ってるんですが、有馬温泉ではいつ捨てられたか分からない空き缶の写真を載せたりしていて、そこですか?という感じ。

 

好みです。

 

よさげな店が開いてなかったり、気を取り直して行った次の店が大当たりだったり、ツイていたり、いなかったり、受け止め方も力が抜けていて、読んでいて優しい気持ちになります。

 

 

 

とても疲れていた日に繁華街の書店に入ったら、「とにかく何かプラスのほうに向かうことを掲げた本ばかりが並んでいるように、そのときは見え」て、読みたい本がないことにショックを受けた著者が、「あのときの疲れた自分が手に取れるような本にはなったと」いう本です。

 

 

「疲れていても読める本」というジャンル

必要かもしれない(笑)

 

 

温泉に入って、(中略)美味しいお酒を飲んで店を出たらこの空と海だ。今日の自分は恵まれている。こういう時間がたまにあって、自分はそれに支えられて生きている。ピンクとオレンジの間ぐらいの色合いの夕日が波に映っているのを見て、そう思う。(P162)

 

 

おつき合いありがとうございます。