昭和52年3月10日初版発行
角川書店
角川歴彦さんの『人間の証明』を読んだら、本家本元も読みたくなりました。
「読んでから見るか、見てから読むか」
思えば、読んでも見てもいなかった。
平河町にある東京ロイヤルホテルの最上階
最上階のスカイダイニングに現れた外国人刺殺体
事件を追う若い刑事の生い立ちと過去の記憶
代議士と教育評論家夫婦のひび割れた家庭
病を得て、妻の稼ぎで暮らす男
その妻の不倫相手
現場に落ちていた古い麦わら帽子と、刺された男が持っていた西條八十の詩集
母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
すべてが、少しずつ絡んでいきます。
「人類全体に復讐する」ために刑事になったという棟居(むねすえ)の人間不信の奥にある「人を信頼したい」という思いが、事件を解決したように思えます。
霧積、七尾の自然とニューヨーク、東京の喧騒を対比させ、文明に対しても鋭い考察を展開し、戦後の日本とアメリカをあぶり出していく。
Mama,Do you rememver the old straw hat you gave to me.
映画のテーマ曲『人間の証明のテーマ』は、角川春樹さんが英訳したそうですね。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
僕はあのとき、ずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
もしかして、作家の最高傑作じゃないでしょうか。
(『野生の証明』しか読んでないけど)
人間って一体なんなんでしょうね?
おつき合いありがとうございます。