2020年3月30日

朝日新聞出版

 

 

マガジンハウスの淀川美代子は皇居前・半蔵門に急いでいた。(中略)

ふと、ジーンズに縦縞のジャケット姿の細身の女性がコンビニに入るのを見かけ、もしかしたら、小林麻美かと思ったが、明確にはわからなかった。もし女優にオーラというものがあるとしたら、その女性からはその光が感じられなかったからだ。

 

 

1991年、結婚を機に芸能界を引退し、25年間子育て一筋だったのは、自身の育った家庭環境のせいでしょうか。

 

父親には外に女性がいて、母親も不在がち、年の離れた姉が嫁いでからは、読書や映画に慰めを得ていたようです。

 

オーラを消すほど家庭にどっぷりハマっていたのは、彼女にとって幸福なことだったに違いありません。

 

ご主人の田邊さんとは17年越しの交際。

結婚を望んでいなかった彼とは、何十回も別れようと思ったそうです。

 

先の見えない不安から、睡眠薬と酒浸りの日々。

結婚はいらないから、やっぱり子どもだけは欲しい。

 

だけど、それは望めない。

 

思い悩む中、「子どもを持たない人生だってあるよね」と、ふとふっきれた半年後、妊娠がわかったそうです。

 

事務所がしっかりとガードする中、未婚のまま出産。

 

その後は、子育てのため、表舞台に立つことがなかった彼女ですが、2016年、クウネルの表紙を飾って復活したのを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。

 

25年のブランクをまったく感じさせないあでやかさでした。

 

 

◇◇◆

 

「そこに出てきてはいけない人が出てきたっていうのかな、生活感がなく、透明感というか、テレビに出てはいけない人なのではないかとはらはらしたり」(ライトパブリシティ社長杉山恒太朗氏)

 

「アイドルが姿を現すとまず歓声が飛び交うものだが、麻美の場合、周囲が静まり返るのだった。拍手もなくため息。彼女には人を黙らせる美しさがあった」

 

◇◇◆

 

 

あとがきは麻美さん本人が書いています。

 

息子さんを出産した病院での退院の朝。

いつものように裏口からそっと出ようとする麻美さんに、院長先生が言ったそうです。

 

「息子さんは、正面玄関から堂々と退院させなさい!」

 

こらえきれず泣いてしまった麻美さんは、そのとき37歳でした。

 

 

知的な雰囲気をまとった古風な女性。

 

表紙の写真も素敵です。

 

 

 

 

 

 

おつき合いありがとうございます。