河出書房新社
〈僕〉:主に男性が自分を指す言葉
ボクとも読みますが、別の読み方では「シモベ」
へりくだっているようですが、使ってる人にはそういうつもりはなさそう。
ちょっと不思議なことばじゃないですか?
この言葉に引っかかって、ちゃんと調べてくれた人がいました。
類書はあまりないそうです。
そもそも筆者がこの言葉に興味を持ったきっかけは、小学生のとき、「おれ」と言った男子に対して、女の先生が「この学校には〈おれ〉なんていません。〈僕〉と言わんとあかん」といったことのようです。
お行儀がいいような感じがする「僕」ですが、社会人ともなれば、「僕」ではなく「私」が正式な感じ。
〈僕〉という言葉はもともと中国で使われていた〈自称詞〉で、古くは『古事記』や『日本書紀』でも見られ、謙譲の意味あいがあったようです。
その後、平安以降、江戸時代〈僕〉はほとんど使われなくなり、再び使用例が見つかるのは、元禄時代(1688-1704)に入ってから。
筆者は吉田松陰がこの言葉を好んで用いていたことに注目し、その背景を考察します。
さらに明治時代、共通の学問を背景とした「対等な男子どうし」が用いる言葉として使われるようになったようですが、、黙阿弥や夏目漱石の作品からもそのことが示されます。
◇◇
〈ぼく〉〈おれ〉〈わたし〉〈わい〉〈わし〉男性には自称詞のバリエーションがありますが、女性はというと、〈わたし〉〈うち〉ぐらい?
地方によっては、もうちょっとあるでしょうか。
自称詞〈僕〉を女性が使わないのはなぜか。
と、この辺はジェンダーっぽい話になってきます。
『リボンの騎士』や『ベルサイユのばら』に出てくる〈強い女性〉には言及されますが、つらいぜ!ボクちゃん コミック 全3巻完結セット (双葉文庫―名作シリーズ)が出てこないのは残念!
※『つらいぜ!ボクちゃん』高橋亮子/つらいことがあっても、ポーズを決めて明るく乗り切る女の子「ボクちゃん」。周りからも「ボクちゃん」と呼ばれている。
外国語では、あまり種類がない〈自称詞〉
〈僕〉という言葉の歴史をたどる興味深い内容でした。
おつき合いありがとうございます。