岩波書店
幸田文はラジオやテレビに登場する作家のはしりとして活躍した。
幸田露伴の次女として生まれ、自身も作家となった幸田文。
テレビやラジオで姿を見たり、声を聞いたりしたことはないのですが、その声は張りがあり、語り口は歯切れよく、話術は巧みだったそうです。
その幸田文の対話集です。
対話のお相手は、志賀直哉、江戸川乱歩、安藤鶴夫、小堀杏奴など。
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徳川夢声と対話するのは、昭和32年
夢声 あたしはノテ(山の手)そだちなんですが、おたくさまは・・・?
幸田 向島です。
夢声 川むこうですね。
初対面で「川むこう」なんて失礼じゃないかと思うのですが、夢声は「おたがいに、京橋っ子、神田っ子ではないわけです。江戸の中心じゃない」
そだちが「ずいぶんちがってまさあね」と言いながら、お互いの共通点を探っていく対話が気持ちいいです。
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当時まだ丸山姓だった美輪明宏との対談は、昭和33年。
幸田文58歳、三輪25歳ぐらいでしょうか。
白と黒と紫が好きだという美輪明宏ですが、このころすでに「五十か六十くらいになったらみんな身の回りに着ているものを白ずくめにして、髪の毛なんかも胡麻塩になったらみんな脱色して白にしちゃって、それにふさわしいような生活をしたいと思う」と言っているんですね。
25歳で言ったこと、そのとおりになってるってすごくないですか。
美輪明宏との対話はなかなか濃くて、
三輪が、絹の服を着ていると満たされると言えば、
「絹物をじかに着ると性欲をかきたてられる」と、幸田
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草柳太蔵との競馬談義のタイトルは「私は乱れるほどの競馬ファン」
濃い色の馬というのはどうしても強そうに見えますでしょ。ダマされたくないとは思いますね。
ほかにも辻嘉一、沢村貞子、土門拳、西岡常一、辻邦男など。
これは、軽く読めて深い。
おもしろかったです。
おつき合いありがとうございます。