2022年2月5日発行
白水社
冒頭の斎藤真理子さんの文章によると、「その他の外国文学」とは、大手インターネット書店が外国文学のカテゴライズに使っている言葉だそうです。
ヘブライ語
チベット語
ベンガル語
マヤ後
ノルウェー語
バスク語
タイ語
ポルトガル語
チェコ語
なじみのない言語の文学作品を翻訳している「その他の外国文学」の翻訳者たち。
なぜその言語?
という動機は人ぞれぞれですが、共通するのは、その国の文学がおもしろいからということでしょうか。
「イディッシュやりなよ」という恩師のひと言がきっかけで、ヘブライ語にかかわるようになった鴨志田聡子さん。
ヘブライ語は仕方なく始めたといいます。
イスラエルで暮らし、いろいろな国から移住してきた人に聞き取り調査するようになります。
それらの人に共通するのは、祖父母、親、子と世代ごとに母語や第一言語がちがうということ。
さまざまなバックグラウンドを持つ人が、「ヘブライ語」という言語を自分のことばとして選びとる、何気なく日本語だけを話している私には簡単には想像できない世界です。
吉田栄人さんが、メキシコのユカタン半島先住民によって話されてきたマヤ語を学ぶきっかけも、ほとんど偶然のようなものといえるでしょう。
メキシコ・ユカタン半島先住民によって話されてきたマヤ語は、スペイン語以外の教育が禁止され、マヤ語を話すと差別されたという歴史もあり、話す人が少なくなっている言語でした。
「何度か調査で足を運ぶうちに、ユカタンの間や社会がいちばん性に合うと思うようになった」吉田さんは、教材のほとんどないマヤ語を学ぶために、自ら文法書まで作ってしまいます。
「歌うように話す、メロディアスなことば」と呼ばれるノルウェー語。
「自分のための本」がたまたまバスク語で書かれていたという金子奈美さん。
「時間のあるときに開いて、ちょっと読んでは置いておく」という読み方ができるような訳を目指しているというタイ語翻訳者の福冨渉さん。
9人の「その他の外国文学」の翻訳者たちとその言語のかかわりを読むのは、ワクワクするような楽しさでした。
外国文学を読むって、その土地に根差した価値観みたいなものをじかに知ることができる。その体験自体がすごく重要かなと思います。
(チベット語翻訳者・星泉さん)
それぞれの章の最後に、翻訳の参考になる本とおススメの文学作品、その文化や社会の概要を知るための本の紹介もあって、それも読みたくなります。
おつき合いありがとうございます。