2022年10月20日発行
新潮社

 

毎年きちんと人間ドッグを受けてきたし、煙草とお酒は13年前にやめて一度も飲んでいないし、食生活だってそう無茶をしたもんだとは思いません。

 

突然、すい臓がんと診断され、そのときすでにステージ4b。

 

余命4か月と言い渡された、作家、山本文緒さんの日記です。

 

4か月ってたった120日じゃん。

 

夫とふたり、軽井沢の家で過ごす日々を「突然20フィート超えの大波に襲われ、ふたりで無人島に流されてしまったような」と表現します。

 

タイトルはそこからとられているんですね。

 

 

ある日、自分でホワイトソースから作ったグラタンを床にぶちまけてしまった夫が泣きだします。

 

この人はそうは見せなくてもすごく我慢をしているんだなと感じて私も少しもらい泣きしてしまった。

 

 

もうすぐ死ぬとわかっていても、読みかけの本の続きが気になる。

 

・「金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』、死ぬことを忘れるほど面白い」

 

・「村上春樹の『女のいない男たち』を再読。ほとんど内容を覚えていなかった。映画化された短編「ドライブ・マイ・カー」は妻をがんでなくす男の話で、これは夫に読ませるわけにはいかないと隠す」

 

・「海野なつみさんの『Travel journal』を読んでいます。とても良い。小説でもああいうことが書けたらいいのにな」

 

 

私はこんな日記を書く意味があるんだろうか、とふと思う。

こんな、余命4か月でもう出来る治療もないという救いのないテキストを誰も読みたくないのではないだろうか。

 

 

ときにユーモアも交えながら、残された日常を刻む文章。

 

読んでよかった、書く意味はあったと、わたしは思います。

 

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。