忘れられた歴史がある。
1960年代後半から70年にかけて、高校は政治闘争の舞台となった。このあいだまでクラブ活動や受験勉強に励んでいた、どこにでもいるような高校生が、ヘルメットをかぶり角材を手にした革命運動家になってしまった。
まえがきより
「大学紛争を契機に一部高校生が暴力的な政治活動に走る現象が生じ、昭和四十四年にはこのような事例が全国的に多発した(『学制百二十年史』文部省)」そうです。
反戦や反原発、校則や制服、テストの廃止、生徒の自主性を重んじることを訴えるもの、学校によって要求はさまざまですが、学校を封鎖する、教師に対し自己批判を迫るなど、過激な行動もあったようです。
本書は、当時の資料、回顧録、証言などをもとに、1969年から1970年にかけての半年という短い期間に、全国の高校で起こっていたことを再現します。
著者は『大学ランキング』などの編集に携わった教育ジャーナリストで、1960年生まれ。
自身が高校時代に関心をもった「高校紛争」について、いつかは調べてみたいと思っていたそうです。
紛争を受けてか、1969年には文部省見解で高校生の政治活動が禁止されました。
「政治活動の禁止」は実にこわいフレーズである。「活動」できない以上、「政治」を考えることをやめてしまう。政治に興味を持たなくなる。こうなると、社会に対して思考停止状態になりかねない。社会に関心を持たない、もっと言えば、高校生が批判的なものの見方を身につけることを妨げる。そうなりはしないか。「禁止」という発想は、人格形成、精神的成長という点からみれば、極めて危険である。(P280)
その後の活動家たちの中に、ミュージシャンの坂本龍一さんの名前がありました。
1967年、都立新宿高校に入学し、その年の「10.8羽田(ジュッパチ・ハネダ)」で目覚めてしまったそうです。
訃報を受けての評伝に東日本大震災後、反原発デモに参加していたことが紹介され、「政治的言動は控えたかったけど、黙っていられなかった」というコメントがありました。
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