資本主義が行き詰っている今、日本的生き方が問題の解決になるかもしれないという、本書の結論は魅力的です。
著者のモリス・バーマンは詩人、小説家、エッセイスト、社会評論家、文化史家と紹介され、
『デカルトからベイトソンへ―世界の再魔術化』(柴田元幸訳、文藝春秋、2019)などの著書があります。
もともと外国から文化を柔軟に受け入れてきた日本人が、ペリー来航で急速に列強に追いつかなくてはならない状況に陥り、その行きついたところが第二次世界大戦だったというのは、理解できるところでした。
さらに、戦後の占領によって、アメリカが日本にもたらした資本主義が、企業戦士を生み、家庭を破壊し、自殺、いじめなど、今に至る問題を引き起こしているという意見もとっぴなものではないでしょう。
アメリカのやり方は、ペリーのときもマッカーサーのときも、イラクでも同じで
・自分たちは神に「選ばれし国民」であり、民主主義やアメリカ的生活様式を地球上の全国民にもたらす使命を帯びている
・アメリカ大陸、そして最終的には世界とは、際限なく拡張するフロンティアである
・人生とは、個人主義、競争、財産の獲得のことである。「幸福の追求」すなわち資産の追求、これがアメリカンドリームである
明治維新とその余波、戦争と占領などで、日本人の心がむしばまれてきた歴史をたどります。
5章では、日本人の精神の背後にあるものについて、西田幾多郎などの京都学派に触れながら迫ります。
著者自身もよくわからないのだがといいながら、簡潔にまとまっていて参考になりました。
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・見かけに反して、日本は永遠に同一である。どこまでも柔軟で、ありとあらゆる批判を吞み込んで込んでしまう。
・時間を永遠の現在という瞬間の連なりと捉える(道元流の)考え方の影響により、非軸的で、基本的な価値観は変わらない
「甘え」の価値観にも踏み込み、『なんとなくクリスタル』まで引っぱり出して、「日本」を明らかにする試みはまた、対比としての「アメリカ」を浮かび上がらせるものでもあり、興味深い内容でした。
お読みいただきありがとうございます。