毎日新聞、土曜日の書評欄に「なつかしい一冊」というコラムがあるそうです。
本書は、2020年4月4日から2021年3月31日まで
50人の執筆者による「なつかしい一冊」をまとめたものです。
小川洋子さん『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』
柚木麻子さん『ハイジ』
あさのあつこさん『人間の絆』
中島京子さんは『赤頭巾ちゃん気をつけて』
私もこれは最近、読み直したばかりでした。
「サンパ」「ミンセー」「ラリパッパ」
「いまや脚注が必要だろう」という中島さんの言葉にうなずきます。
角田光代さんの『リチャード・ブローティガン詩集 突然訪れた天使の日』というのが、かっこいい。
中村吉右衛門さんは、子どものころから体が弱く、外で遊べず、布団にくるまって天井の節目を数えていたといいます。
それに飽きると、絵本や漫画を見ながら、ありあまる時間を過ごし、中学生のころには、「岩波文庫」を片っ端から買ってもらい、本棚に飾って悦に入っていたそうです。
二代目吉右衛門を継いだころ読んだ、鏑木清方『紫陽花舎随筆』をあげます。
笑う哲学者・土屋賢二さんの一冊は、ドストエフスキーの『白痴』
木村浩さん訳の岩波文庫版です。
大学入学後、手当たり次第に本を読み漁る中、出会った本書に衝撃を受け、それからは授業も出ないで、ドストエフスキーを片っ端から読んだといいます。
当たり前だと思っていた価値観が一つ残らず音を立てて崩れ、頼りになるものをすべて奪われ、寒空に裸で投げ出されるようだった。
それがきっかけで、哲学科に転向してまうほどの影響を受けたという土屋さん。
そのまま法学部に進んでいたら、官僚になって、ノーパンしゃぶしゃぶなどの不祥事でクビになるか、出世コースに乗って活躍し、日本の政治行政をダメにしていたかのどちらかだったろうと、述懐します。
どこまでが本当かわかりませんが、それほどならばと、手に取りました。
大人になってから読んで、よかったと思います。
お読みいただきありがとうございます。