1867年11月の終わり、さる公爵の末裔であるレフ・ニコラーエヴィチ・ムイシキンが、スイスでの療養生活を終えて、ロシアに戻ってくる。ムイシキン公爵は、サンクトペテルブルグに向かう列車で、最近、莫大な遺産を相続したというパルフョーン・セミョーノヴィチ・ロゴージンと乗り合わせる。

 

列車の中で、ムイシキンは、ロゴージンから、ある金持ちの貴族の世話になっているナスターシヤ・フィリッポヴナ・バラーシコフという女性のうわさを耳にする。ナスターシヤは物すごい美人で、ロゴージンはこの女性に夢中らしい。

 

ムイシキン、ロゴージン、ナスターシヤの三角関係に、ムイシキンの遠縁の三姉妹のうちの三女アグラーヤ・イワーノヴナ・エパンチナが絡み、物語が暴走。

 

1巻の終わりで、突然、ムイシキンはナスターシヤに結婚を申し込み、ナスターシヤはロゴージンと逃げ出すという驚きの展開。

 

合間に挟まれる小話も、斬首刑の話だとか、皆殺しの話だとか、穏やかではありません。

 

訳者の亀山さんによる親切すぎる読書ノートで、亀山さんなりの解釈が説明されますが、作者は、謎は謎のまま、読者の理解に委ねているように思います。

 

善良で、何の悪意も抱いていない公爵の言動が、まわりを混乱に陥れていく。

 

登場人物は多く、主役級じゃない人物も語る語る語る。

 

そして、きわめつけは、ヒロインのナスターシヤの一見、わけわからん言動の魅力。

 

ナスターシヤは悪女なのか、それとも聖母なのか。

 

聖書のモチーフも随所に登場して、ははん、これはあれを暗示しているのかと想像しながら読むのも楽しいです。

 

鞭身派、去勢派などの言葉が出てくるので、性的な含みもありそう。

 

ムイシキンによる、突然のカトリック批判は、登場人物の口を借りて、作者が言いたかったことなのでしょうか。

 

いや~、ドフトエフスキーおもしろいわ。

 

数奇な運命に導かれる登場人物たちの、絶望、孤独、ひりひりとした心情を味わうことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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