『螢』は中国と日本に由来する。
かの地でわたしは幾度となく
扇子や絹地に所感の揮毫をもとめられた。
タゴールは1861年、カルカッタ生まれの詩人、思想家。
1931年、『ギタンジャリ(歌のささげもの)』によってアジア人で初めてノーベル文学賞を受賞。
1941年に亡くなるまで、通算5回、日本を訪れたといいます。
俳句にも影響を受けているという短詩は明瞭で、ストレートに心に響きます。
大地は面倒を見てくれるかわり
樹を地上に縛りつける
空はなにひとつ求めないで樹を自由にする
単独に存在するものは虚無であり、
他者の存在がそれを真実にする。
わたしの背負った重荷は 軽くなる
みずからを笑いとばすときに。
世界はわたしに映像で話しかける、
わたしのたましいは音楽で応じる。
人びとは インクをこぼした言い訳のために
昼を夜といつわる。
果実に目がくらむと
花を見逃してしまう。
富は 大きなお荷物、
幸福は いのちの豊かさ。
間違いは真実のすぐとなりに住んでいる
それゆえ わたしたちは騙される。
紙魚は 人間が本を喰わないのを
奇妙で馬鹿げているとおもう。
タゴールという詩人は、今では忘れ去られているのでしょうか。
入手するのは少し困難なようです。
2010年9月23日
風媒社
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