『コーヒーと恋愛』は、『可否道』というタイトルで1962年から1963年にかけて読売新聞に掲載された小説です。

 

1969年に『コーヒーと恋愛』と改題され、角川書店により文庫化されました。

 

あらすじ

抜群にうまいコーヒーを淹れることができるモエ子(43歳)は、8歳年下のベンちゃんと暮らしている。

舞台装置家で、稼ぎのないベンちゃんを養うモエ子は、黎明期のテレビ女優で、役柄は中年サラリーマンの奥さんとか、薬屋のおばさん。

 

茶の間の平和をこわさない年齢や容姿のおかげで、女性にもウケがよく、なまじなスターより収入があるほどです。

それが、ベンちゃんが「生活革命」と称し、若い女優の家に転がり込んでしまい、幸せな日々に突然、終わりが。

 

悩んだモエ子がコーヒー仲間に相談したことから、ドタバタが始まり……
 

 

もっとも、男にそむかれて、泣くという役は、彼女によく回ってくるので、泣いていると、芸をやっているようで、本気になれないこともあったが、涙の出てくるところだけが、違っていた。

 

 

獅子文六さんの小説は読んだことがなかったのですが、2013年に筑摩書房より復刻されているだけあって、すごくおもしろいです。

 

 

付録に『可否道』を終えてという、筆者による連載後の感想があります。

 

 

そこには「私も戦前から、ずいぶん新聞小説を書いてるが、今度のような経験は、最初だった」とあって、コーヒーの飲み過ぎで胃を壊した、とあるのもおもしろいです。

 

 

さらに「古希の老人が新聞小説を書くということ自体に、ムリがあるのかもしれない」「新聞小説は、五十代までの体力にして、適応度をもつような気がする」と、おっしゃいます。

 

 

が、古希の方が書かれたとは思えないオシャレでテンポのよい文章なのでした。

 

 

2013年4月10日
筑摩書房

 

 

お読みいただきありがとうございます。