稲垣えみ子さん
朝日新聞の論説委員をつとめたのち、50歳で退社。
その辺のいきさつを書いた魂の退社―会社を辞めるということ。 アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。などの著書があります。
東日本大震災後にはじめた節電生活でも有名で、1か月の電気代はわずか200円という暮らしだそうです。
その稲垣さんがいつの間にかピアノをやっていたというではありませんか。
退職してから3年後の53歳のとき、子どものときに習っていたピアノを再開する機会が訪れます。
昭和の時代、ピアノを習っていた女の子はたくさんいました。
そして、たいていの子は練習が好きではなかった。
私も同じです。
私の場合、3歳ぐらいで習い始めたらしいのですが、ろくに練習もせず、ピアノの前に座るのはお教室の時間だけ。
当然、うまくなるはずないんですが、発表会のときはなぜか失敗しないという心臓の強さで、才能があるなんておだてられ、高校生ぐらいまでやってました。
それはどうでもいいんですが、稲垣さん。
40年ぶりのピアノ再開にあたり、若きピアニストを先生として紹介してもらうんですね。
この方がいいんです。
大人(子どもはもちろん)の習い事では、先生は大事ですね。
そして、今やだれもが先生を選べる時代です。
プロのピアニストに習えるなんて有名人だからでしょ、と思ったら、この先生、だれにでも教えてくれるみたいですよ。
さらにすごいのが、稲垣さん、ピアノをお持ちじゃない。
行きつけのカフェの開店前か、閉店後、お客様がいないとき、もしくは優しそうなお客さましかいないときを見計らって、練習をするのだそうです。
それも1日2時間以上。
旅先でもスタジオを押さえて練習します。
それじゃあ、うまくなるでしょ
って思った、あなた
甘いです
大人の身体はそんなに簡単に動かない
練習をし過ぎれば指が痛くなる
それでも、稲垣さんは今日もポツポツとピアノを奏でます。
発表会の様子もレポートされます。
思わず涙してしまったのは私だけでしょうか。
やっぱり頑張って何かをするって人に感動を与えますよね。
出版を記念してのトークショーの動画を見つけました。
0:33ぐらいから米津さんによるショパンのノクターン
0:40ぐらいから、稲垣さんと米津さんがドヴォルザークのスラブ舞曲を連弾します。
ピアノという大人の習い事をとおして、老いについて、平和について、いろいろ考えてあちらこちらと揺れ動く稲垣さんの心境が伝わってきて、おもしろかったです。
稲垣さん、ピアノを弾くときもすごく揺れます。
表紙のとおりの美しい姿勢で素敵でした。
お読みいただきありがとうございます。