小説が読まれなくなった

雑誌が売れなくなった

コミックも頭打ち

 

次々と廃刊に追い込まれる大手出版社の雑誌部門。

カルチャー誌の編集長・速水もまた、上司から廃刊をほのめかされ、無理難題を押しつけられる毎日を過ごしている。

 

 

俳優・大泉洋にあて書きされたという小説は、編集長の速水が、人当たりのいい笑顔とユーモアで世渡りしていくお話のように始まります。

 

速水が繰り出す、田中真紀子、鈴木宗男などの物まねは、実際、大泉洋さんのレパートリーなんだそうですね。

 

 

映画化もされていますが、原作とはまた違った趣で、大泉さんの物まねも封印されています。

 

 

 
 

大泉洋演じる編集長・速水の下で働く新人編集者・高野恵を演じるのは松岡茉優さん。

 

 

原作の高野と違って松岡さんらしい真面目なキャラクターです。

 

 

謎の新人作家、矢代聖役の水沢氷魚さん、人気モデルの城島咲役の池田エライザさんのお二人はビジュアルが美しい。

 

 

 
 

 

 

原作は同じく出版社を舞台とし、カルチャー誌編集長・速水も大泉洋さん。

 

なのに、全く違うお話です。

 

作者は罪の声 (講談社文庫)の塩田武士さん。

しっかりした社会派ミステリーです。

 

出版界のほか、テレビ局、パチンコ業界などにも取材し、エンタメ業界全体の過渡期を描きます。

 

飄々とした速水の裏の顔に迫り、こちらはこちらで、あっと驚くどんでん返し。

 

 

原作に忠実な映画も観たくなってしまいました。

 

 

エピローグには探偵も登場。

 

滋賀県・琵琶湖の観光船「ミシガン」を舞台にしたラストは、映像のシーンが浮かんでくるかのようです。

 

 

 

「情報の世紀」が本格化するのはこれからだ。今後もメディアはより速く、より個人的に、より便利に、より安価に――という流れで変質していくだろう。溢れるほどの情報が自分に合った心地よい世界へ誘い、社会は細分化を続ける。結果、あらゆる業界が薄利を押しつけられ、まとまりのなさから多売の機会すら奪われる。だが、世の中が衰退してく様を、ただ指をくわえて見ているわけにはいかない。

 

思考を続ける人間には、真贋を見極める目が備わっている。(中略)思考の源は言語だ。言葉を探し、文化を育み続けることこそ、出版人の使命だ。

 

 

 

2019年11月
KADOKAWA

 

 

お読みいただきありがとうございました。