北海道の小さな本屋、いわた書店さんおススメの一冊です。

 

 

草思社から出版され絶版となっていましたが、いわた書店で売れたのをきっかけに2020年に河出書房新社から復刻版が出ています。

 

最後の数寄屋大工と言われた京都の中村外二さんをはじめ、8人の職人から聞き取ったお話がまとめてあります。

 

取り上げられているのは、左官、表具師、錺(かざり)師、畳師、簾師、石工、庭師。

 

第一級の職人さんたちの言葉はどれも含蓄があります。

 

室戸台風のときに、自分の建ててる家を近くの竹やぶに潜んで見ていてたという大工の中村さん。

 

一生かけてやっとる仕事やからね。
もし、これがつぶれたら中村は台なしやと思うて気が気でないもん。

 

その住宅は何とか残ったそうですが、大きな台風みたいなものは一生にいっぺんあるかないかだから、自分の建てている建物が実際にどうなるか見るのは大切な経験だというのです。

 

 

聚楽壁というのは、もともと京都の聚楽で取れる土を使ったことからそういわれるようになったとか、今では取れなくなって似せた土を人工的につくっていることとか、知らないこともたくさんありました。

 

今みたいにまがいもんばっかりつくってたら、後世に残るもんてあらしません。こういうものは大仰にいうたら何万年て残るでしょう。それを計算したら、ただみたいなもんや。そう思いませんか。(錺師の森本さん)

 

聞き書きですので、話し言葉で書かれていて読みやすいです。

20年以上前の本です。今では昔ながらの職人さんはもはやいなくなっているかもしれません。

 

 

時代の趨勢とともに伝統的技術自体が衰退の一途をたどり、彼らの仕事の基盤そのものが崩壊しつつある。陽の当たらない場所で人知れず、かろうじて持ちこたえていた優れた工匠は少なくなかったが、もうそれも限界らしい。そういう瀬戸際にきているのだ。

 

現代の日本にもし文化と呼べるものがあるとすれば、こうした職人たちの手仕事や工芸の中にこそ存在していたのではなかったか。わたしにとって、これらの職人の感覚と仕事と心を知ることは、同時に日本人の美意識のありようを探ることでもあった。

 

まえがきより

 

 

一度なくしてしまうと取り戻せない大切なものがありますね。

 

お読みいただきありがとうございます。