老後に書庫を持つことは「男のロマン」だそうです。
もともとこのプロジェクトは、著者の松原さんの「阿佐ヶ谷で小さな庭のある書庫を持ち、梅の木を植え、万年青の鉢と仏壇も置きたい」という思いから始まりました。
どちらかというと、メインは仏壇と梅の木だったみたいな感じなんです。
松原さんは当時は大学の先生でしたが、神戸の出身で、おじいさんが事業で財を成した方だったようです。
祖父から受け継いだ家は阪神大震災で全壊。
両親が亡くなった後は、自身と2人の妹で土地を分けることになりますが、家と庭に愛着があったようです。
今の民法では財産は子どもたちで平等に分けます。
土地は平等に分けながら、仏壇は長男の松原さんが受け継ぐものと当然のごとく主張する妹たちに不満を持ちながらも、松原さんは祖父に対する感謝もあり、仏壇を守っていくことを決意します。
同時に、自分がアパートを借りて保管していたたくさんの本、退職すれば大学から持ち帰らなければならない本のことも考え、「書庫を建てる」ことになります。
梅と万年青を自宅に植えると言ったときに反対した妻とのちょっとした確執もあったようですが、その妻の後押しにより、建築家の堀部安嗣さんに設計を依頼します。
堀部さんの設計した家の写真もあるのですが、窓の取り方などに工夫があって、住み心地がよさそうです。
さて(すごく省略)書庫は完成しますが、ちょっとこれ、すごくないですか。
お仏壇があるのごらんになれるでしょうか。
敷地面積 28.70㎡(8.68坪)
建築面積 20.83㎡(6.30坪)
延べ床面積 46.24㎡
8.6坪の土地に1万冊!
着工から竣工まで9か月を費やした男のロマン。
工事現場の写真などもあり、とても興味深かったです。
ずいぶんと町や家の中から”闇”や”死の気配”といったものが消えた気がする。(中略)その死の気配とは”畏怖”ともつながる感覚である。自分の存在を超えたものと日常的に接することがふつうの世界だった。(堀部安嗣さんの言葉より)
お読みいただきありがとうございました。